このシリーズでは、障害者たちが「稼いで自立」を成功させている事例をまとめた書籍「障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。」についてグッと要約してお話します。
この書籍では喜びと誇りを持って働いている障害者たちを紹介しています。
ここで登場する障害者たちはどうやって成功したのでしょうか?
それぞれがどんな活躍をしているのでしょうか?
今回は「予約の取れないフレンチレストラン」について、前回の続きでレストランを支えるスタッフ(障害者)の仕事ぶりをお話します。
障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。 ソーシャルファームという希望 [ 姫路 まさのり ]
アイスブレイク
(今週のお題「手づくり」)
アイスブレイクではきちほーしのことをよく知ってもらうため、はてなブログの「今週のお題」をヒントに、本題と少し外れたお話をします。
今週のお題は「手づくり」です。
てづくり…。
自分の人生を振り返ってみると、きちほーしは手先が不器用な方だと思います。
きちほーしのパートナーは逆に器用な方で、切ったり貼ったりして何かを作るのが好きみたいです。
きちほーしはそういったことがめんどくさいと思う方で、切ったり貼ったりが極力少なくなるように考えてしまいます。
パートナーはとにかく手を動かす人。
きちほーしはまず考える人。
いい関係ですね^^。
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本記事の範囲
この記事では「CASE1 10万円で働き方が変わる ──予約の取れないフレンチレストラン──」の一部を要約してお話します。
ほのぼの屋を支えるスタッフの仕事ぶり
六田宏さん(裏方のリーダー。精神障害)
まずは裏方のリーダー。六田さんの仕事ぶりをご紹介します。
主な仕事
バックヤードを含む裏方作業の全般を担っています。
- グラスや食器の整理。
- 制服やクロスのアイロンがけ。
- 店内清掃
- テーブルスタンバイなど
ここでは業務内容を一言で羅列しましたが、実際は一言で言えないくらいの内容です。
例えばテーブルスタンバイ。
予約があれば予約人数に応じてテーブルと椅子を配置し、クロスを張り、一輪挿しを飾り、人数分のナイフ、スプーン、フォーク、食器を並べる。
ここまでの仕事を担っています。
障害の詳細
六田さんは精神障害があります。
トゥレット症候群という、重めのチック症のようなものがあり、まばたきする、顔をしかめる、急に頭をふる、大声を出すなどの症状があります。
一般的に精神障害者は精神的・身体的な不調の波があり、服薬・カウンセリングなどの対処が必要です。
六田さんの仕事ぶり
地味な作業ばかりですが、六田さんのプロ意識はすごいです。
まずグラスは全て手作業で磨き上げ、指紋一つ残さないように丁寧に拭きます。
アイロンがけもシワ一つ残すとお客様に見えてしまいます。それを意識することにやりがいを感じているそうです。
テーブルクロスもやむを得ずシワを残して出す時は閉店まで申し訳ないと思うようです。
開店準備の時にはリーダーとなって声掛け作業をします。
六田さんが嬉しかったお客様の言葉
開業から10年経ったある日、お客様にこう言われたそうです。
「10年も経つのに、ここのお店のグラスにはホコリ一つないね」
この言葉がとても嬉しかったそうです。
六田さんの収入
六田さんは1日5時間しか働けず、給料は月13万円。
障害年金と合わせて20万円ほどです。
そんな六田さんは奥さんと3人の子供がいるお父さんです。
ちなみに他の作業所の月収は1万円ほどで、もし六田さんが今の仕事で月収3万円なら「え?」と思うそうです。
給料が増えるに連れてよりよい仕事のために何をすえきか考え始め、今ではお客様の「ありがとう」のために働いているそうです。
*きちほーしの感想
よく言われる言葉ですが、自分の作業を上司に言われたからやるのか、お客様の喜びのためにやるのかではやりがいも仕事の質も違います。
六田さんは常にお客様を意識していて、地味な裏方作業・単純作業でも誇りが持てる良い例だと思いました。
知的障害あるわが子キチノがこんな誇りを持てる仕事に就けたらどんなにいいでしょう。
ただ、六田さんはお客様の言葉で喜ぶようですが、コミュニケーションができないキチノはお客様の何で喜べるでしょうか。
自閉もあるのでお客様の声を直接聞くこともできないでしょう。
キチノは他人がどうなると喜ぶのか?ここらへんが課題です。
近久学さん(ウェイター。精神障害)
次に表の顔を勤めるウェイター、近久さんの仕事ぶりをご紹介します。
愛称はチカちゃんです。
主な仕事
文字通りウェイターをやっていて、レストランほのぼの屋の看板ウェイターです。
詳細は以下の通りです。
- テーブルへの料理の給仕や食器の運び出し
- メニュー内容の読み上げ
- お客様の要望や質問にも対応
- ホール全体の把握など
障害の詳細
近久さんも精神障害があります。
統合失調症による幻聴に悩まされているようです。
近久さんの仕事ぶり
スープ一つ出すにしても早すぎないように、食器を下げるのも遅すぎないように気をつけています。
リピーターさんの顔はだいたい覚えていて、過去に何番のテーブルに座っていたかまで覚えているようです。
お客様への挨拶一つで居心地が変わるため最新の注意を払っています。
ホールだけでなく厨房にも意識を持ち続けなければなりません。
出勤したらすぐにシェフやパティシエにその日の料理の説明を受け、頭に入れます。
営業中も厨房から「メインあがりました」の声に反応し、落ち着いてそれでいてスピーディにお客様のもとへ運び入れます。
給仕が終わると定位置に戻ってホールのお客様に気を配ります。
近久さんが嬉しかったお客様の言葉
記念日には必ずほのぼの屋に来るという常連のお客様の言葉に、近久さんは喜びを感じたそうです。
「ほのぼの屋を障害者が働いてるレストランとは誰も思っていませんよ。私達もボランティアじゃなくて、料理と雰囲気が好きで来てるんです」
近久さんの収入
近久さんの給料は10万円ちょっと。障害年金と合わせて月収17万円ほどです。
一般的に精神障害者は長時間勤務が困難ですが、近久さんは何年も長時間勤務をこなしています。
以前はグループホームで生活していて、クレジットカードで借金200万円に膨らんだ時期もあったようです。
ですがこのままではダメだと一人暮らしすることを目標に借金を少しずつ返し、今(取材当時)アパートで一人暮らしをしています。
グループホームにいた時は家賃補助があって多少余裕もありましたが、それでも自由がある一人暮らしが気に入っているようです。
そんな彼も将来的には結婚して子供もほしいとのことです。
近久さんにとって「ほのぼの屋」とは?
筆者が近久さんに「ほのぼの屋とはどんな存在ですか?」と聞きました。
返ってきた返事は「仕事をしながら、人それぞれの自由な居場所も作れる場所」
*きちほーしの感想
近久学さんのエピソードできちほーしがとても気に入ったのが、「(ほのぼの屋は)仕事をしながら、人それぞれの自由な居場所も作れる場所」というところです。
知的障害あるわが子キチノもこういうことが言えるところに就職できればとても嬉しいです。
(つづく)
書籍概要
タイトル
障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。 ソーシャルファームという希望
発売日
2020/03/17
著者
寺本 晃久, 岡部 耕典, 岩橋 誠治, 末永 弘
概要
障がい者は低賃金が当たり前って、おかしくない?
予約の取れないフレンチレストラン、年商2億円、奇跡のクッキー工場、IT、ワイン醸造にアートetc
「稼いで自立」の成功例を紹介する、とっても大事な「お金」の話。
目次
- CASE1 10万円で働き方が変わる ──予約の取れないフレンチレストラン──
- CASE2 生きがいの分配 ──年商2億円に届いた奇跡のクッキー──
- CASE3 福祉×芸術=アール・ブリュット ──試みの先にあるもの──
- CASE4 ワインとIT ──本当の自立とは何か──
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