このシリーズでは訪問介助の実態について書かれた書籍「ズレてる支援!」についてグッと要約してお話します。
この書籍の内容を理解することで、知的障害者の介護とはどんな仕事なのか?介護という仕事に問題点はないのか?探りたいと思います。
今回は、岡部耕典さんが書き記した、重度知的障害者のご子息・亮佑さんの介護の実例についてお話します。
なお、きちほーしは介助と介護の区別がまだついていないので、用語を混同してしまうことご容赦ください。
アイスブレイク
アイスブレイクではきちほーしのことをよく知ってもらうため、はてなブログの「今週のお題」をヒントに、本題と少し外れたお話をします。
よーするにこの1年でどんな変化を経験したか?だそうです。
今年は…、ふりかえるのも嫌ですが、資産がかなり減りました。
VTとかVTIとか持っていたのですが、アメリカの景気後退でかなりやられてしまいました。
おそらく今後も後退するでしょうし、円高にもなりそうです。
まさに泣きっ面に蜂!
まぁ、23年はバーゲンセールかもしれません。
バーゲンセールですよね?
バーゲンセールだといいなぁ…。
はじめに
どーも!きちほーしです!
きちほーしの子どもキチノは知的障害があります。
この子は親なき後誰かの介護を受けながら生きていくことになるでしょう。
しかしきちほーしは介護士が具体的にどんな介護をするのか知りません。
そこできちほーしは、訪問介護の実態について書かれた書籍「ズレてる支援!」を読んでみました。
今回は、岡部耕典さんが書き記した、重度知的障害者のご子息・亮佑さんの介護の実例の章についてお話します。
訪問介護・施設介護の区別なく介護の実態を知ろうとしてこの書籍を読んでいるのですが、この章に関しては訪問介護がとても興味深く映りました。
というのも、重度知的障害者でも一人暮らしができるというのは、知的障害者を子に持つ親としてはかなり希望が持てるからです。
介護があれば知的障害者でも独立ができる!?
複数回に渡ってお話します。
本記事の範囲
この記事では書籍の第3章「亮佑の自立と自律」を要約してお話します。
ある重度知的障害者 亮佑さんのプロフィール
亮佑さんのプロフィールをまとめるとこんな感じです。
- 支援校を2011年3月(東日本大震災の月)に卒業。
- 2011年4月に実家(*)から車で15分のアパートに住む。
(*)書籍には「自宅」と表現していますが、文脈から実家と思われますので、ここでは「実家」と表現します。 - 市内の通所施設に通っている。無職。
- 介護付き一人暮らしをしている。
- 月に1回帰省している。
- 亮佑さん宅には時々連れ合いもいる。
亮佑さんの障害の状況
亮佑さんの障害の状況は以下のとおりです。
- 重度の自閉症・知的障害(療育手帳2度・障害程度区分6)
- 強い行動障害(行動援護判定は13点)。
- 自宅の壁は落書きだらけで、風呂・トイレも何度も修理が必要だった)
- 過食・異食あり。
- 多動・行動停止・突発的行動・奇声あり。
入居時の様子
ここでは亮佑さんのお住まいがどんなところか、入居時にどんな配慮をしたかをお話します。
まとめると以下のようになります。
- 古い木造2階建てアパート。2Kの部屋。
- 通所施設に通える距離で、近隣トラブルも物理的に起こしにくい物件を選定。
- 近隣トラブルを起こせばただちに退去する念書が入居の条件となった。
- 窓ガラス飛散防止のため窓にテープを貼るなど、いろんな対策をした。
2番めに挙げた「近隣トラブルを起こしにくい物件」とは、具体的には階下・隣に部屋がない物件です。
奇声や騒音でトラブルにならないように配慮しています。
4番目に挙げたように窓ガラス飛散防止対策を施しましたが、それらの心配は杞憂に終わり、特に大きな近隣トラブルは発生していないとのことです。
介護内容
亮佑さんの介護体制は以下のようになっています。
- 平日: 夕方に通所施設に迎え~翌朝の送迎バスに乗せるまで一人の介護士が介護する
- 土日祝: 夕方~翌朝の介護士に加え、昼間にも介護士が入る
- 曜日ごとに決まった介護士が担当する
- コーディネーター(親・行政・通所先との調整役)もいる
- 年に2人くらいの交代あり
ちなみに介護士の構成メンバーは自立前から継続しています。
一般的に知的障害者は環境の変化に弱いのですが、メンバーを継続したことは亮佑さんが自立する上で大きかったと岡部さんは言います。
介護の支給
介護を受けるにも自治体からの給付が重要になります。
ここでは、亮佑さんがどれだけの給付を受けているのかお話します。
2014年4月から、重度訪問介護の対象が拡大しました。
これによって亮佑さんの給付は、354時間/月から531時間/月に増えました。
亮佑さんは日中を通所施設で過ごしているので、拡大前の354時間/月(11~12時間/日)でもほぼ24時間の介護が可能でした。
それが531時間/月(17~18時間/日)になったので、通所施設が休みの日も含めて介護を受けることができるようになりました。
ただし、給付を受けられても行動援護事業者を確保できなければ意味がありません。
行動援護とは、外出時の移動中の介助、排せつ、食事の介助等を指します。
亮佑さんの場合はたまたま自立前から利用していたこともあってすぐに確保できましたが、通常は確保が困難であることは注意が必要です。
東日本大震災の当時
亮佑さんが自立したのは東日本大震災に見舞われたまさにその年その月です。
書籍にはその頃の様子も記載されていました。
かいつまんで書くとこんな感じです。
- 岡部さんは亮佑さん宅へ行くのが困難になってしまった。
- 介護士が亮佑さん宅に行ってくれてはいたが、岡部さんは亮佑さんと添い寝する役があり、亮佑さんの心が不安定になってしまうため早く帰宅しなくてはならなかった。
日本に住む以上地震からは逃れられません。
帰宅困難で親も介護士も障害者のもとへ行けなくなってしまうことは想定しておかなければいけません。
そしてそれによって障害者が震災の不安に加えていつもと状況が異ってしまうことによる不安がでてくることも考えなければなりませんね。
(つづく)
書籍概要
【本の紹介できるかな?】介護保険施設のサービスの現状 -介護危機 ―「数字」と「現場」の処方箋2-
タイトル
ズレてる支援!――知的障害/自閉の人たちの自立生活と重度訪問介護の対象拡大
発売日
2015/11/5
著者
寺本 晃久, 岡部 耕典, 岩橋 誠治, 末永 弘
概要
「支援」は、〈そもそも〉〈最初から〉〈常に〉ズレている! 『良い支援?』刊行から7年。使わせてと訴えた「重度訪問介護」の対象拡大が実現する中、あらためて問われているものとは何か! 支援を使って、地域で自立した暮らしをしている人がいること。集団生活ではなく一対一の支援をモデルにすること……「支援」と「当事者」との間の圧倒的なズレに悩み惑いつつ、そのズレが照らし出す世界を必死に捉えようとする「身も蓋もない」支援の営みの今とこれから!
目次
まえがき ─── 寺本晃久
第一部 ズレてる支援
第1章 生活・支援の実際 ─── 寺本晃久
第2章 何を基準にして支援するか ─── 寺本晃久
第3章 亮佑の自立と自律 ─── 岡部耕典
第4章 ズレてる支援/おりあう支援 ─── 岩橋誠治
第5章 支援は常にズレている ─── 末永 弘
第二部 重度訪問介護の対象拡大と生活の実際
第6章 重度訪問介護という枠組み ─── 寺本晃久
第7章 東京の北多摩地域の事例から ─── 末永 弘
第8章 「重度訪問介護の対象拡大」の経緯とこれからのために ─── 岡部耕典
第三部 次につなげる
第9章 重度訪問介護の対象拡大を重度知的当事者の自立生活支援につなげるために ─── 岩橋誠治
第10章 パーソナルアシスタンスという〈良い支援〉 ─── 岡部耕典
第11章 将来の支援の担い手について ─── 末永 弘
あとがき ─── 寺本晃久