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【知的障害者向け訪問介助】ある重度知的障害者の介助の実例2 – 書籍「ズレてる支援!」7

このシリーズでは訪問介助の実態について書かれた書籍「ズレてる支援!」についてグッと要約してお話します。

この書籍の内容を理解することで、知的障害者の介護とはどんな仕事なのか?介護という仕事に問題点はないのか?探りたいと思います。

 

今回は前回に引き続き、岡部耕典さんが書き記した、重度知的障害者のご子息・亮佑さんの介護の実例についてお話します。

 

アイスブレイク

(特別お題「わたしの2022年・2023年にやりたいこと」)

アイスブレイクではきちほーしのことをよく知ってもらうため、はてなブログの「今週のお題」をヒントに、本題と少し外れたお話をします。

今週のお題は「わたしの2022年・2023年にやりたいこと」です。

 

なんか「わたしの2022年」は前回のお題「ビフォーアフター」と似たようなお題ですね^^。

というわけで「2023年にやりたいこと」についてお話します。

 

2023年は今までと違う新しいことをやりたい!(ざっくり~~^^;)

今思い描いているのは農村・山村でワーケーションとか、

障害者支援関連のサークル?のようなものに参加するとか、

そういうのなんですけどね。

 

ワーケーションはコストの問題もあるけどNW環境の問題もあるんですよね~。

障害者支援関連のサークルについては、オンラインのがあればいいんですが(人嫌いなんで^^;)、見当たらないんですよね~。

障害者支援関連のボランティアとかバイトとか?

そういうのから始めようかなぁ?

 

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本記事の範囲

この記事では書籍の第3章「亮佑の自立と自律」を要約してお話します。

コーディネータについて

連絡・調整の要

亮佑さんのコーディネータは親・行政・通所先との連絡・調整を担っていて、介護士も兼務しています。

このコーディネータは岡部さんが最も信頼する人ではありますが、他の介護士とチェックし合う体制を敷いています。

行政や通所施設は同居の介護士ではなく別居の親に連絡を取りたがる

ちなみに岡部さんは亮佑さんと別居しており、一方で介護士たちは亮佑さんと同居しています。

なので行政や通所施設は事情をよく知る介護士たちとやりとりするのが自然なのですが、なにかと岡部さんの方に連絡が来るそうです。

通所施設の迎えのバスに亮佑さんが乗り遅れたときも、岡部さんの方に連絡が来るので、ちょっと辟易しているようです。

生活費の管理体制

亮佑さんの主な収入は障害年金等です。

その管理体制は以下の通りです。

小額費用の管理体制

日常的な買い物関係の費用は以下のように管理しています。

  1. 年金関連は亮佑さん名義の通帳に振り込まれる。
    通帳はコーディネータが管理。
  2. コーディネータが、1週間分の生活費を亮佑さんの財布に入れる。
    予算は前週1週間のレシートをチェックして決める。
  3. その日の介護士が1日の使用金額を決めて、亮佑さんの財布から支払う。

高額費用の管理体制

家賃や旅行費など高額費用の管理は以下のような体制になっています。

  • 家賃・水道光熱費等は口座引落。
  • 旅行・家具等の特別支出は親管理の本人名義の通帳から出金する。
    ただし、事前にコーディネータと親の話し合いはある。

その他

帰省日の費用や特別な出費は親が負担したり、衣料品を親が買って渡すことも多いようです。

ちなみに介護士が駐車するための駐車場は本人負担としていて、その負担が大きく少し赤字のようです。

訪問介護「親なきあと」の課題

訪問介護の体制が落ち着いたとしても、親なき後の課題がまだ残っています。

介護の継続性

訪問介護は施設介護と違って、引き継ぎの問題が発生します。

多くの場合介護士は被介護者よりも年齢が上なので、被介護者が元気な内に引退の時期を迎えます。

そうなると親なき後に介護士の確保を託さなければなりません。

使いたくない成年後見制度

岡部さんは家賃がいらない持ち家に亮佑さんを住ませることで、暮らしに余裕が持てると考えているようです。

しかしそのためには成年後見制度の利用を迫られます。

その成年後見制度は問題が多く、岡部さんは以下のような理由で使いたくないと考えています。

  • 後見人の対応が不誠実な事例がたくさんある
    • 後見人が横領してしまう
    • 必要なお金をなかなか出さない
    • 兄弟と結託して本人を入所施設に入れてしまう
  • 後見制度の体制にも問題がたくさんある
    • 後見人は月1回しか本人に合わないので身上監護はほぼ不可能。
    • 事務作業に追われ、意思決定支援も机上の空論で判断してしまう。
  • コーディネータが実質後見人の役割を果たす
    • 岡部さんの感覚で言うと、亮佑さんの場合はコーディネータが後見人の役割を果たしているようです。

知的障害者の自立を阻む3つの「壁」

知的障害者が自立をする上で3つの壁が立ちはだかると岡部さんは言います。

制度の壁: 支援の対象は限定的

2014年4月から重度訪問介護の対象が拡大しましたが、その対象は障害支援区分4以上かつ行動関連項目10点以上と極めて限定的です。

制度の利用がある程度広がると、財政的理由で利用の上限時間が定められるなどして制度の縮小につながる懸念もあります。

親の壁: 一番行動に問題がある思春期に施設に入れてしまう

岡部さん曰く、思春期をすぎると行動障害(自傷・他傷、こだわり、異食、多動など)は落ち着くようです。

逆に言うと思春期が行動障害のピークなのでしょう。

そして親はだいたいその時期に定年を迎え、気力・体力・経済力が低下していき、この時期に耐えきれず入所させてしまう親も多いようです。

耐えきれないのは気力・体力の面だけでなく経済面でもそうです。

収入が低下している時に障害年金を得られる同居人は経済的に心強く、時がたつに連れて手放すのが難しくなります。

本人の壁: 他人の介護を経験せず自立の時期を迎えがち

障害ある子は小さい頃から閉鎖的・保護的な環境で生活しがちです。

それは本人の主体性が育ちにくい環境でもあります。

学齢期から他人による長時間介護を受けながら在宅生活を継続することで、積極的な社会参加を行うことには意味があると、岡部さんは言います。

おわりに

 

いかがだったでしょうか。

前回と今回の2回にわたって、著者岡部さんのご子息・亮佑さんの訪問介護の事例についてお話しました。

まとめ

まとめるとこんな感じです。

  • 亮佑さんの障害
    • 重度の自閉症・知的障害(療育手帳2度・障害程度区分6)
    • 強い行動障害(過食・異食、多動、奇声など)(行動援護判定は13点)。
  • 入居時の配慮
    • 近隣トラブルを物理的に起こしにくい(階下・隣に部屋がないなど)物件を選定
    • 近隣トラブルを起こせばただちに退去する念書が入居の条件となった
  • 介護内容
    • 亮佑さんは平日の昼に通所施設に居るため、介護士は晩だけ入る。
      休みの日は昼・晩に介護士が入る
    • コーディネータ(親・行政・通所先との調整役)がいる
  • 介護の支給
    • 531時間/月(17~18時間/日)支給され、ほぼ毎日介護を受けることができる。
    • ただし、給付を受けられても行動援護事業者(外出・食事・排泄の介助など)の確保は一般的に困難。
  • 災害
    • 帰宅困難で親も介護士も障害者のもとへ行けなくなることもあり得る。
      岡部さんは東日本大震災の時に涼介さんのもとへ行くのが困難になった。
    • 震災によって、障害者は災害そのものの不安と、いつもと状況が異る(いつもと違う介護士がいる)ことによる不安が発生しうる。
  • コーディネータ
    • 親・行政・通所先との連絡・調整の要
  • 生活費の管理体制
    • 日常的な買い物費用は、買い物用の通帳をコーディネータが管理し、財布は介護士が管理する。
    • 旅行・家具などの特別支出は、特別支出用の通帳を親が管理している。
  • 訪問介護「親なきあと」の課題
    • 施設介護と違い、引き継ぎの問題が発生
    • 持ち家を持たせたいが、問題の多い成年後見制度を使わなければならない。
  • 知的障害者の自立を阻む3つの「壁」
    • 制度の壁: 支援の対象は限定的
    • 親の壁: 一番行動に問題がある思春期に施設に入れてしまう
    • 本人の壁: 他人の介護を経験せず自立の時期を迎えがち

感想

曲がりなりにも自立できると言う点では訪問介護はとてもいいやり方だとは思います。

ですが、親なきあとの介護の継続や持ち家の相続などの問題があることを考えると、入所施設やグループホームに分がある気がします。

また、以前別の記事でも書きましたが「障害年金グループホームであれば生活保護になることは少ない」ようです。

これも含めて考えると、やっぱりグループホームがいいのではないかなと思うのです。

 

とはいえきちほーしはグループホームのことをほとんど知りません。

別の機会にグループホームについて調べることにします^^。

書籍概要

タイトル

ズレてる支援!――知的障害/自閉の人たちの自立生活と重度訪問介護の対象拡大

発売日

2015/11/5

著者

寺本 晃久, 岡部 耕典, 岩橋 誠治, 末永 弘

概要

「支援」は、〈そもそも〉〈最初から〉〈常に〉ズレている! 『良い支援?』刊行から7年。使わせてと訴えた「重度訪問介護」の対象拡大が実現する中、あらためて問われているものとは何か! 支援を使って、地域で自立した暮らしをしている人がいること。集団生活ではなく一対一の支援をモデルにすること……「支援」と「当事者」との間の圧倒的なズレに悩み惑いつつ、そのズレが照らし出す世界を必死に捉えようとする「身も蓋もない」支援の営みの今とこれから!

目次

まえがき ─── 寺本晃久

第一部 ズレてる支援

第1章 生活・支援の実際 ─── 寺本晃久

第2章 何を基準にして支援するか ─── 寺本晃久

第3章  亮佑の自立と自律 ─── 岡部耕典

第4章  ズレてる支援/おりあう支援 ─── 岩橋誠治

第5章  支援は常にズレている ─── 末永 弘

第二部  重度訪問介護の対象拡大と生活の実際

第6章  重度訪問介護という枠組み ─── 寺本晃久

第7章  東京の北多摩地域の事例から ─── 末永 弘

第8章  「重度訪問介護の対象拡大」の経緯とこれからのために ─── 岡部耕典

第三部 次につなげる

第9章  重度訪問介護の対象拡大を重度知的当事者の自立生活支援につなげるために ─── 岩橋誠治

第10章  パーソナルアシスタンスという〈良い支援〉 ─── 岡部耕典

第11章  将来の支援の担い手について ─── 末永 弘

あとがき ─── 寺本晃久