このシリーズでは訪問介助の実態について書かれた書籍「ズレてる支援!」についてグッと要約してお話します。
この書籍の内容を理解することで、知的障害者の介助とはどんな仕事なのか?介助という仕事に問題点はないのか?探りたいと思います。
今回は前回の続き。
訪問介助に関わる介助者が具体的にどんな介助をするのかお話します。
どんな介助をしどんな配慮をしてくれるのか(つづき)
前回は、食事の支度、健康管理、掃除・洗濯、排泄、金銭管理、についてお話しました。
今回はそれ以外の雑多なことについてお話します。
その他
服装関連
服装関連の介助として以下のようなものがあります。
- 仕事の有無に応じて作業着 / 普段着を用意する
- 季節の変わり目に夏服や冬服を用意する
- クリーニングに出すか押し入れにしまうか
不定期な買い物
買い物も食材のような定期的なものばかりではありません。
不定期に発生する買い物もあります。
- ティッシュペーパーやトイレットペーパーのストックを見て買いだめを判断する
- 灯油が無くなりそうになったら配達の手配をする
防寒・防暑の対応
障害者本人が部屋が寒くてもエアコンをつけなかったり、服も厚着をしない場合があります。
エアコンをつけない理由も以下のように様々です。
- 障害者本人がエアコンが嫌いだから
- エアコンの頼み方がわからないから
- そもそも本人が異常事態だと認識していないから
介助者はこのようなことも配慮が必要です。
行政イベント
行政イベントにも対応しなければなりません。
年金現況届など役所関連の対応が必要な場合がありますし、選挙だってあります。
選挙の場合は候補の選び方・投票の仕方も介助します。
障害者本人が選挙に行かないという選択をするかもしれません。
ですが投票は立派な権利ですので、行くことを前提に対応するのがよいでしょう。
介助の代行手配
介助者の病気や災害などで、本人宅に介助者が行けない場合もあります。
そんなときは代行手配をします。
ただし、代行者が入ることによっていつもと勝手が違ってしまいます。
本人や他の介助者に影響を与えることも覚悟しなければなりません。
災害の対応
介助は平時ばかりとは限りません。
災害の対応・支援もあります。
避難時の支援もあります。
法事の対応
親族・友人に不幸があった場合は法事に参列することもあります。
その準備や付き添いなどの支援もあります。
帰省の対応
正月など帰省する場合もありますが、これも色々検討しなければなりません。
実家に帰るのか、帰省の期間はどのくらいか、介助者は付き添うのか。
また、実家であっても障害者本人にはいつもの生活と違うので、とまどう場合があることも配慮しなければなりません。
介助者の派遣依頼の心得
ここでは介助者の派遣を依頼する際に知っておいたほうが良いことについてお話します。
市区町村で申請
介助者の派遣を依頼する際には、まず市区町村の障害福祉の窓口でホームヘルパーの利用を申請しましょう。
これによって介助料が市区町村から利用者経由で事業所に支払われます。
使用できる介助制度は「家事援助」「身体介護」「移動支援」「行動援護」「重度訪問介護」などがあります。
依頼前に事業所と関係性を持つのがおすすめ
事業所もいつも人手が空いているわけではありません。
まずは自立前に事業所との関わりを持ったほうが良いでしょう。
事業所によって得手不得手があるので、可能なら依頼先の事業所も1箇所ではなく複数箇所のほうが良い。
そして複数の事業所を依頼するにしてもそれは介助者に慣れてから。
まずは一つの事業所に依頼して、徐々に依頼する事業所を増やしたほうが良いでしょう。
依頼する介助者の人数は、病欠なども考慮して5人程度はあったほうが良さそうです。
おわりに
いかがだったでしょうか?
このシリーズでは訪問介助の実態について書かれた書籍「ズレてる支援!」についてグッと要約してお話しました。
今回と前回で、訪問介助がどんな介助をしてどんな配慮をしてくれるのか、お話しました。
食事の支度、健康管理、掃除・洗濯、排泄、金銭管理がありました。
さらに服装関連、不定期な買い物、防寒・防暑の対応、行政イベント、介助の代行手配、災害の対応、法事の対応、帰省の対応、など実に様々です。
障害者本人にべったりなのも大変ですが、介助者がいちばん大変なのはコミュニケーションが取れない相手への「配慮」なのかもしれませんね。
ではまた!
書籍概要
【本の紹介できるかな?】介護保険施設のサービスの現状 -介護危機 ―「数字」と「現場」の処方箋2-
タイトル
ズレてる支援!――知的障害/自閉の人たちの自立生活と重度訪問介護の対象拡大
発売日
2015/11/5
著者
寺本 晃久, 岡部 耕典, 岩橋 誠治, 末永 弘
概要
「支援」は、〈そもそも〉〈最初から〉〈常に〉ズレている! 『良い支援?』刊行から7年。使わせてと訴えた「重度訪問介護」の対象拡大が実現する中、あらためて問われているものとは何か! 支援を使って、地域で自立した暮らしをしている人がいること。集団生活ではなく一対一の支援をモデルにすること……「支援」と「当事者」との間の圧倒的なズレに悩み惑いつつ、そのズレが照らし出す世界を必死に捉えようとする「身も蓋もない」支援の営みの今とこれから!
目次
まえがき ─── 寺本晃久
第一部 ズレてる支援
第1章 生活・支援の実際 ─── 寺本晃久
第2章 何を基準にして支援するか ─── 寺本晃久
第3章 亮佑の自立と自律 ─── 岡部耕典
第4章 ズレてる支援/おりあう支援 ─── 岩橋誠治
第5章 支援は常にズレている ─── 末永 弘
第二部 重度訪問介護の対象拡大と生活の実際
第6章 重度訪問介護という枠組み ─── 寺本晃久
第7章 東京の北多摩地域の事例から ─── 末永 弘
第8章 「重度訪問介護の対象拡大」の経緯とこれからのために ─── 岡部耕典
第三部 次につなげる
第9章 重度訪問介護の対象拡大を重度知的当事者の自立生活支援につなげるために ─── 岩橋誠治
第10章 パーソナルアシスタンスという〈良い支援〉 ─── 岡部耕典
第11章 将来の支援の担い手について ─── 末永 弘
あとがき ─── 寺本晃久