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知的障害者にキャッシュレスを教える挑戦:送金編 - 障害ある子キチノの教育日記1

知的障害あるわが子キチノの将来を考えると、とても心配で仕方ありません。

だから少しでも大丈夫になるように教育したい、でもなかなか難しい。

知的障害ある子の親御さんは皆同じ思いではないでしょうか?

 

わたしたち知的障害者の親は、自分の子供たちにどこまで教えていくことができるのでしょうか?

 

このシリーズでは、知的障害あるわが子キチノに対する教育の試みと、その結果についてお話しします。

 

知的障害のある子供を育てる親御さんたちへの情報共有と、共感の場として、この記事が役立つことを願っています。

 

今回は、キャッシュレスの送金を教えたことと、その結果についてお話します。

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はじめに



キチノが自立的にできることを増やしたい!

こんにちは、きちほーしです!

 

きちほーしの子供キチノには知的障害があります。

 

今まで色々教育を行ってきましたが、将来的に障害者施設に入るのは確実でしょう。

そこではあらゆることをお世話してもらえるかもしれません。

 

じゃぁなんでもかんでもお世話してもらって過ごせばキチノは幸せなのでしょうか?

きちほーしはそう考えません。

 

お世話してもらう=行動の自由が減る、ときちほーしは考えているからです。

支援者の体調が悪くなったり他の障害者のお世話で手一杯になると、キチノは行動できません。

キチノが思うように行動できるかどうかは支援者の都合に左右されてしまいます。

 

だからキチノが自立的に行動できることを増やすことは、キチノの自由を増やすことだと考えています。

キャッシュレスを教えたい!

キチノが自立的にできるようにさせたい行動の一つがキャッシュレスです。

 

実はキチノはキャッシュレスどころか現金も理解していません。

お金というものをまだ理解できていないんですね。

 

でもこれからはキャッシュレスの時代。

どうせお金を覚えるなら現金よりもキャッシュレスを覚えたほうがいいです。

キャッシュレスの中でも教えたいのはクレジットカードではなくQR決済。

Paypayや楽天Payのような、スマホQRコードを使うタイプのものです。

 

というのも、きちほーしはQR決済に障害者自立の可能性があると勝手に夢見ているからです。

QR決済は残金を確認できるし、残金以上の買い物ができないので、クレジットカードよりも浪費が抑えられます。

遠隔で使用状況を監視したり支払いをストップできるアプリを作れば、買い物に後見人や親が同伴しなくても一人でお買い物ができそうです。

 

それに障害者が働くお店でもQR決済が普及しています。

きちほーしの近隣のお店でもいくつか導入していますし、障害者が働くKDDIの社内カフェでもキャッシュレスが導入されているそうです。

 

そんな諸々の背景があって、きちほーしはキチノにキャッシュレス・QR決済を教えたいと思いました。

 

 

 

このシリーズでは、知的障害あるわが子キチノに教えてみたことと、その結果についてお話します。

 

今回はキャッシュレスについてです。

 

 

キャッシュレス教育準備

お店やさんごっこをしてみる

きちほーしがお店屋さんになって、それをキチノに買ってもらうようにします。

キチノが好きそうなお菓子を商品にすればキチノの興味をひけそうです。

キチノには普段から別にお菓子を与えていますので、50円程度の駄菓子を扱うようにします。

使えそうなキャッシュレスを選ぶ

 



おもちゃのQR決済アプリを探すも見つからず

最初はごっこ遊びでQR決済ができるようなアプリがあるんじゃないかと思って探しました。

こんなものもありましたが、カードを商品代わりにしているので実際の買い物とは状況が違います。

健常者は「カードが商品の代わりになっている」と理解できるかもしれませんが、キチノは理解できそうにありません。

 

また、きちほーしと全く同じ発想でPaypayを利用したレジごっこアプリを作ろうとした人もいたようですが、うまくいっていないようです。

これを真似てきちほーしも作ってみようかと思いましたが…、作る時間を良いアプリを探す時間に回したほうが良さそうですね^^;。

個人間送金が使えないか調べてみた

次に考えたのはQR決済アプリの個人間送金を使う方法です。

 

お店で使われるQR決済の支払い方には2つのタイプがあります

  • 支払い方A: 1つはスーパーでよくあるように、店側が客のQRコードやバーコードをスキャンするタイプ
  • 支払い方B: もう1つは小さなお店でよくあるように、客が店側のQRコードをスキャンして送金するタイプ

 

これらに似た手順で個人間送金できるアプリがないか調べてみました。

 

最初はLinePayで個人間送金ができると聞いて調べてみたのですが、送金手順にQRコードが全く登場しないのでこれは諦めました。

Paypayの個人間送金が良さそう

いろんなQR決済アプリを探してようやく見つけたのが支払い方Bに似ているPaypayの個人間送金です。

一般的によく使われるのは支払い方Aなので、本当はこれと似た手順で個人間送金できるアプリがいいのですが仕方がありません。

 

目的を支払い方Aになじむことから、QRを使った決済になじむことに変え、Paypayの個人間送金を利用することにしました。

(参考)Paypayの個人間送金の手順

Paypayの個人間送金の手順は以下のとおりです。

  1. 受け手のスマホQRコードを出す
  2. 送り手がスマホで上記のQRコードを読む
  3. 送り手がスマホに暗証番号を入れる
  4. 送り手が送金額を入力する
  5. 送り手が送金ボタンを押す

本当は支払い方Bと全く同じであることが望ましいですが、少し違うところがあります。

きちほーしが知る限り支払い方Bには3の手順がないはずです。

とはいえ大した手間がかからない手順なので、本当のお店で支払う際には少し指導するだけですぐに慣れるとは思います。

(参考)Paypayの加盟店として利用することも考えてみた

ちなみに、支払い方Aを教える方法として、きちほーしがPaypayの加盟店になってしまうということも考えました。

契約者は個人事業主でもいいらしいです。

実店舗が必要なようですが自宅を実店舗にしてしまえばクリアでしょう。

決済手数料が2%以下(1.6~1.98%)なので、50円の支払いを200回(10000円分の決済)やっても200円以下の手数料です。

有料アプリにお金を払ったと思えばそんなに大きな出費ではありません。

 

…と思ったら初期費用が2000円、1ヶ月の月額利用料2000円がかかるようでした^^;。

さらに、支払いには消費税とかも発生するでしょうね。

 

そんなわけでPaypay加盟店になって支払い方Aを教える、という方針はあきらめました。

キャッシュレスを教えてみた

キャッシュレスでお金を払ってほしいものが手に入る喜びを味わってもらいたいので、本当は早い段階でお店やさんごっこをしたいところです。

 

ですが、キチノにとってはきちほーしがお店を出すということで面食らうし、キャッシュレスを使うということでも面食らいます。

 

いきなり面食らうことが2つも押し寄せるとキチノの頭がおいつかないと思いますので、まずはキャッシュレスを教えるところから始めてみました。

手持ち金の説明

まず手持ち金を理解させます。

おそらく最初はちんぷんかんぷんでしょうが、続ければなじむと思うのです。

 

キチノのPaypayにはあらかじめ50円を送金しておいています。

きちほーしはPaypayを開いて、残金が書かれているのを見せました。

 

 

きちほーし「キチノ、これなんて書いてる?」

キチノ「?」

きちほーし 「ごじゅ…?」

キチノ 「こじゅー!」

きちほーし 「ごじゅうえんね」

キチノ 「こじゅーえん!」

きちほーし 「これは、キチノのお金です」

キチノ 「??」

 

やっぱりキチノは理解できていないようで、あらぬ方向に視線を向け始めました。

キチノは理解できないことがあるとこのような行動をよくします。

 

きちほーし「これで、お買い物できるよ!」

きちほーし「お菓子買えるからね!」

 

キチノはまったくこちらに集中していませんが、まずはキャッシュレスに触れることが大事!

キチノに興味があろうがあるまいがおかまいなく、きちほーしは「50円あるよ!」「これでお菓子買えるよ!」と何度も説明しました。

 

支払い方の説明

次に送金の仕方を教えました。

 

再びキチノのPaypayを開いて残金が書かれているのを見せます。

 

きちほーし 「キチノ、これなんて書いてる?」

キチノ 「ごじゅーえん!」

きちほーし 「そう、50円!じゃぁ今から、私に30円送ってね。」

キチノ 「?」

 

きちほーしのスマホにPaypayのQRコードを出しました。

 

きちほーし 「じゃぁココ(きちほーしのQRコード)をスキャンするよ。『スキャン』をタッチして…、ココ(きちほーしのQRコード)を写そう。」

 

キチノはきちほーしの指示に従ってPaypayのカメラが起動し、QRコードを写そうとしますがうまく写りません。

きちほーしが誘導してなんとか読み込めるとキチノのPaypayは暗証番号入力画面に切り替わりました。

 

きちほーし 「じゃあ番号入れてね」

 

キチノが普段使っているスマホの暗証番号を入れると、画面は金額入力画面に切り替わりました。

 

きちほーし 「30って入れて。さん…ぜろ…。それでこのボタン(送金ボタン)を押して…」

 

キチノはとにかく言われるがままに操作します。

そしてスマホは送金済の画面に切り替わりました。

 

きちほーし 「はい!これでキチノは30円を払いました!」

キチノ 「?」

 

送金させるだけで一苦労!

一方でキチノが飲み込めたという手応えは全くありませんでした^^;。

 

残金の説明

次にキチノにはお金が残っていることを教えました。

キチノのPaypayは支払済の画面になっていて、残金が表示されていません。

 

きちほーし 「キチノ、何円残ってるでしょう?」

キチノ 「?」

きちほーし 「50ひく30は?」

キチノ 「??」

きちほーし 「(電卓を取り出して)50ひく30は?」

キチノ 「???」

 

2~3か月前にキチノには電卓の使い方を教えていました。

以前は電卓をかなり使いこなしていたキチノですが、電卓を差し出されたキチノはキョトンとしていました。

あまりに久々で電卓の使い方を忘れてしまったのか、それとも慣れないことがいっぱいで状況が飲み込めていないのか。

たぶん両方かな…。

 

きちほーし 「50って入れて、ご…ぜろ…ひく…さん…ぜろ…は?」

キチノ (言われるままに操作して、電卓には20が表示されます。)

きちほーし 「20だね!」「50ひく30は20! 今20円残ってるよ!」

キチノ 「?」

きちほーし 「20円残ってるよ、あのね…」

 

きちほーしはそう言いながらPaypayの残高を見せようとしました。

数回操作しないと残金の画面が出てこない!もどかしい!

 

きちほーし 「(残金を見せながら)ほら20円!」

きちほーし 「キチノは初め50円持ってたよね?そして私に30円払いました。残りは50円ひく30円で20円残ってます。」

 

キチノはすでにあらぬ所に視線を向けていました。

色々頑張りましたが、全く手応えがありません!^^;

 

 

3回やってみたけど理解している様子なし

 



何回かやればなじむだろうと思ってその後3回ほどやってみましたが、まったく飲み込めている様子がありません。

きちほーしの指示するままに送金操作をしているだけで、何をしているのかは理解できていないのかもしれません。

いつも作業が終わると集中途切れ、あらぬ方向に視線を向けます。

 

う~ん、やっぱりお菓子で釣ったほうがいいのかな…。

 

おわりに

このシリーズでは、知的障害あるわが子キチノに対する教育の試みと、その結果についてお話しします。

今回は、キャッシュレスの送金を教えたことと、その結果についてお話しました。

 

使用したキャッシュレスはPaypayです。

Paypayの個人間送金がお店の支払い方に近いのでこれを利用しました。

そして手取り足取り送金の仕方を教えました。

 

指示通りに操作することはできますが、それが何なのかは理解している様子が全くありませんでした^^;。

 

次はお菓子を売るお店屋さんごっこをして、お菓子で興味をひいてみようと思います。

ではまた!

 

おまけ

特別お題「わたしがブログを書く理由

ここではきちほーしのことをよく知ってもらうため、はてなブログの「今週のお題」をヒントに、本題と少し外れたお話をします。

今週のお題は「わたしがブログを書く理由」です。

 

きちほーしがブログを書く理由はもう一つあります。

それは障害者の未来をより良くするために情報を共有することです。

だから時々障害者関係の記事を投稿するのですが、なかなかアクセス数が伸びないのも事実^^;。

 

なんとか障害者関係の投稿でアクセス数を伸ばしたいと思って試みたのが今回の投稿です。

本当は障害者関係の本を読んで要約したのを載せたいという気持ちもありますが、経験上実体験日記のような記事は支持されやすいので、こんな記事もやってみようと思ったんですね。