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知的障害者にキャッシュレスを教える挑戦:現金に立ち戻ってみた - 障害ある子キチノの教育日記3

知的障害あるわが子キチノの将来を考えると、とても心配で仕方ありません。

だから少しでも大丈夫になるように教育したい、でもなかなか難しい。

知的障害ある子の親御さんは皆同じ思いではないでしょうか?

 

わたしたち知的障害者の親は、自分の子供たちにどこまで教えていくことができるのでしょうか?

 

このシリーズでは、知的障害あるわが子キチノに対する教育の試みと、その結果についてお話しします。

 

知的障害のある子供を育てる親御さんたちへの情報共有と、共感の場として、この記事が役立つことを願っています。

 

前回はキャッシュレスを使ったお店やさんごっこをしましたが、あまり手応えがありませんでした。
なので今回は、なるべく買い物の手順に慣れてもらうことを優先し、現金に立ち戻ることにしてみました。

 

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現金を使ってお店屋さんごっこをやってみた

ここではお店やさんごっこをどのようにすすめたのかお話します。

お店の準備

テーブルの上に3~4個ほどカゴを置いて、それぞれにお菓子を入れます。

各カゴには「1こ30えん」などと書いたラベルを貼ります。

値段は10円単位とし、実際の市場価格に近い値にしています。

手持ち金の説明

キチノにはお財布と現金50円を渡しました。

ちなみに数日前からキチノにはお金のドリルを使って現金のことはある程度教えています。

 

きちほーし「キチノ、これいくら?」

キチノ「?」

きちほーし「(50円玉の数字を指さして)ここなんて書いてる?」

キチノ「ご?」

 

これまで2桁以上の数字も教えてきましたが、どうもキチノはまだなじめてないようです。

 

きちほーし 「ごじゅうね」

キチノ 「こじゅー!」

きちほーし 「ごじゅう『エン』ね、ごじゅう『エン』」

キチノ 「こじゅーえん!」

買うものを決める

いつも通りテーブルにお菓子入りのカゴを3~4個並べただけの簡易なお店を開きます。

カゴには「30えん」とか「20えん」と書いたラベルが貼っています。

 

きちほーし 「じゃぁキチノ、お菓子選んで。」

 

キャッシュレスバージョンで何度かやってきたお店ですので、キチノもいつもの流れを理解しています。

キチノは10円のお菓子を4つ選びました。

 

たまたまでしょうが今回は予算オーバーせずにお菓子を選ぶことができました。

これで「買い直し」のステップが省略できて、キチノがキャパオーバーになりにくくなります。

 

支払額を計算してもらう

きちほーしは電卓を取り出してキチノに支払額を計算させました。

 

きちほーし 「今回は10円が4つだから、10かける4です。10かける4。やってごらん?」

 

キチノは言われるままに1…0…と打ってとまどった様子をみせました。

「10」と「4」を入力することはわかっているようですが、「✕」にまだなじんでないようです。

 

きちほーし 「(✕ボタンを指さして)『かける』はコレね」

 

そして電卓には「40」が表示されました。

 

きちほーし 「いくら?」

キチノ 「よんじゅー!」

きちほーし 「よんじゅう『エン』ね」

キチノ 「よんじゅーえん!」

 

お金を払う

きちほーし「じゃ、キチノ。40円ください!」

キチノ 「?」

きちほーし 「(キチノの50円玉を指さして)お金ちょうだい、お金。」

 

キチノは頭に?をいっぱい浮かべながらも、言われるがままに50円玉を渡しました。

 

きちほーし 「はい、50円おあずかりしまーす。」

きちほーしは電卓を叩きながら言います。

きちほーし 「50円…ひく…40円…は、10円! 10円のお返しです!(10円玉を差し出す)」

キチノ 「???」

きちほーし 「いいから10円。これ持ってて。」

 

強引に渡しますがキチノは財布にも入れず、テーブルの上にポンと置きました。

 

完全に10円玉がなんなのか、なぜ渡されたのか分かっていないようです。

 

商品を渡す

きちほーし 「じゃ、キチノ。お菓子持ってっていいよ。後で食べな。」

これまで何度かお店やさんごっこをしたのでキチノはお菓子を持っていきました。

きちほーしのパートナー、キチパに聞くと、キチノは後でお菓子を食べていたようです。

 

前回キチノは買ったお菓子を返してしまいました。

買ったものが自分のものだと理解できなかったのかもしれません。

ですがきちほーしが何度も何度も「持って行って」「後で食べなさい」と言ったかいあって食べるようになりました。

考察

今回は手応えあり!

今回は現金を使って、なんとかキチノがお菓子を買うことができました(この記事のタイトルは「キャッシュレスを教えよう!」なのですが…)。

キチノがある程度理解できたという手応えもあります。

 

キチノは現金と引き換えにお菓子が手に入ること理解できていないでしょうが、ぼんやりとお買い物の手続きは身につけた気がします。

ステップが少ないのが良かったかもしれない

今回手応えがあったのはなぜでしょう?

おそらくキチノにとってクリアするべきステップが前回より少なく、キチノの頭がキャパオーバーにならず、買い物に集中できるようになったからだと思います。

ではどんなふうにステップが減ったのでしょうか?

お店やさんごっこの流れに慣れてきた

まずきちほーしのお店に慣れてきたことが一つあると思います。

きちほーしが並べたお菓子に対してキチノが何を求められているのか、何をすればいいのか、これまでのやりとりで理解してきたのでしょう。

買い直しが発生しなかった

そしてたまたまですが、支払額が持ち金を下回りました。

これで「買い直し」のステップをせずに済みました。

電卓の使用に慣れた

電卓を使うことに慣れたのもあるでしょう。

掛け算というものの概念が分かっていないようですが、徐々になれるかもしれません。

慣れそうになければ別途掛け算を教えます。

なじみのある現金で支払った

前回は支払いをキャッシュレスでやってみましたが、今回は本末転倒をわかっていながらも支払いを現金にしました。

障害者施設で現金を扱ったこともあって、キャッシュレスよりもなじみがあったので、「キャッシュレス理解」のステップがなくなりました。

それでもステップはまだまだ多い

 



今回手応えがあったのはクリアするステップが以前より少なかったからだと思われます。

でもきちほーしが思うに、ステップはまだまだ多そうな気がします。

支払総額を計算するステップ

まず支払総額を計算しなくてはいけません。

電卓を使うものの、キチノはかけざんも理解できていないので、これで頭に「?」を浮かべてしまいます。

現金を計算するステップ

キチノは50円と10円をあわせると60円になることがまだピンときていません。

電卓を使って計算させていますが、これも「?」を浮かべてしまう要因になります。

お釣りを受け取るステップ

キチノは50円玉をお店に渡して、10円玉のお釣りが返されることにピンときてないようです。

電卓を使って計算させていますが、これも「?」を浮かべてしまう要因になります。

その他

欲しくて買ったわけではないかも…

お店やさんごっこの中で、キチノは好きなお菓子を買って、持って行って食べるようにはなりました。

ただ、これはきちほーしが強要したからそうしている可能性は否定できません。

 

これまで何度もお店屋さんを開いては「お菓子選んで」とか「持って行ってていいよ」「後で食べるんだよ」と指示しています。

キチノは言われるがままに行動しているところもあるでしょう。

 

買い物ごっこをしているのは「お金を払えば欲しい物が手に入る」ということを理解してほしいという面もあるのです。

ですが強要してしまうとそのように理解してくれないでしょうねぇ…。

今後の展開

以上の考察をふまえて、今後は以下のように進めたいと思います。

もう少しステップが省略できるように誘導する

今回キチノに手応えがあった理由として、クリアすべきステップが少なかったことが考えられます。

ならもっともっとステップを少なくすればもっと手応えが感じられると思うのです。

 

とはいえ、いずれ全てのステップを一人でこなさなければなりません。

 

最初は少ないステップで慣れていって、徐々にステップを増やしていくのがいいと思うのです。

 

ステップを省略する方法は色々考えられます。

目的に応じて以下に挙げるステップ省略法を取捨選択して、お店やさんごっこを進めるといいかもしれません。

買える数を1個だけにする

いくつも買えると、支払総額を計算するステップが発生します。

1個だけに限定すると、そのステップが省略できます。

手持ち金以下の商品だけ用意する

手持ち金以上の買い物をされると、「買い直し」が発生します。

支払いは当面現金で

キャッシュレスを教えたいのに現金を使うのは本末転倒もはなはだしいですが、まずは買い物の流れを把握してもらうことを優先します。

そのためキャッシュレスよりもなじみのある現金の方を当面は使っていきます。

当面10円玉だけで

50円玉でやりとりすると「お釣りを返す」ステップが発生します。

なのでキチノには最初に50円玉を与えるのではなく、10円玉を5枚与えます。

そうするとお釣りが発生しなくてすみますし「50円玉と10円玉を足して60円」ではなく「10円玉が6枚あるから60円」と計算が簡単になります。

マスターさせたいステップ以外は親がやる

本当は支払額の計算や、50円玉と10円玉合わせると何円になるかの計算も子ども自身にしてほしいところです。

ですが、まずはその一つ一つを教えて上げたほうがいいので、マスターさせたいステップ以外は親がやるといいかなと思いました。

支払額の計算は親が行う

駄菓子屋のおばあちゃんみたく、子どもに計算を教えてあげるように「10円、10円、10円…。はい、30円ね。」と言ってあげます。

この時電卓をたたきながらやると、レジ感が出ていいかもしれませんね。

 

よくよく考えるとスーパーで買い物するときもいちいちかごの中身を計算せず、レジの人に言われた金額を支払ってますしね。

買い直しの判断は親が行う

支払総額が手持ち金を超えた時、これも駄菓子屋のおばあちゃんのように「それじゃ足らないよ」と、お店側(親)が結論を出してもいいかもしれません。

これで手持ち金と支払総額の大小比較のステップが省略できます。

現金の計算も親が行う

支払額の計算も、親がやります。

その際、子どもの財布から一つ一つ現金を取り出して、子どもにみせつけるように「50円と10円で、60円だね。」と言うと、現金を計算するというお手本にもなるかもしれませんね。

おつりの計算も親が行う

これも電卓を叩きながら「50円…ひく…40円で…、10円! 10円のおつりです!」と言うと、お釣りを計算するお手本になるかもしれませんね。

その他

これまで通りの指示をする

「お金を払えば欲しい物が手に入る」ことを教えるためには、指示なく買ってもらうのを待つのがベストでしょう。

ですがこれまでの経験上、指示もなくキチノが積極的に動くことはありません。

なので今は「買い物の手順を覚える」ことを目的として、「お菓子選んで」や「持って行って」の指示はします。

そして買い物の手順に慣れたころに、キチノがお店などでおねだりした時、本物のお店でキチノに支払わせようと思います。

まとめ

 



今回は、なるべく買い物の手順に慣れてもらうことを優先し、現金を使ってお店やさんごっこをしてみました。

知的障害者にキャッシュレスを教える挑戦」なのに現金を使って本末転倒感がありますが、買い物の手順に慣れてきたらキャッシュレスに移行します。

 

そして、前回キャッシュレスを使った時よりストレスたまるステップが減ったおかげか、比較的キチノが理解したという手応えがありました。

ただ、まだまだストレスかかるステップを減らせると思うので、もっと減らし、徐々にマスターするステップを増やしていきたいと思います。

 

次回はもっともっとステップを減らしてトライします。

道のりは遠そうですががんばります!

ではまた!

 

 

おまけ

(今週のお代「心に残る店員さんとのお買い物のエピソード」

ここではきちほーしのことをよく知ってもらうため、はてなブログの「今週のお題をヒントに、本題と少し外れたお話をします。

今週のお題は「心に残る店員さんとのお買い物のエピソード」です。

 

このお題はビックカメラとのコラボみたいなのでそっち系のお話ができればいいのですが、残念ながらありません。

 

というわけで今回お話するのはビックカメラと全然関係なく、一般的なお店のお話をします。

わが子キチノは知的障害があります。

だから奇行・奇声が多いです。

普通の店員さんはちょっと距離を取るかもしれません。

 

ですがたまに知的障害者の扱いに慣れた店員さんがいるお店があるのです。

そんな店員さんはホント大助かりです^^。

ですがその店員さんがやめたりすると大変。

また新たなお店を探さないとだめなんですよね~。