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知的障害者にキャッシュレスを教える挑戦:お店やさんごっこ編 - 障害ある子キチノの教育日記2

(※昨日投稿するつもりでしたが、うっかり予約投稿の設定を間違えていました!)

 

知的障害あるわが子キチノの将来を考えると、とても心配で仕方ありません。

だから少しでも大丈夫になるように教育したい、でもなかなか難しい。

知的障害ある子の親御さんは皆同じ思いではないでしょうか?

 

わたしたち知的障害者の親は、自分の子供たちにどこまで教えていくことができるのでしょうか?

 

このシリーズでは、知的障害あるわが子キチノに対する教育の試みと、その結果についてお話しします。

 

知的障害のある子供を育てる親御さんたちへの情報共有と、共感の場として、この記事が役立つことを願っています。

 

今回は前回に続き、キャッシュレスを教えたことと、その結果についてお話します。

 

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はじめに

 



キチノにキャッシュレスを教えたい!

今やキャッシュレスは当たり前の時代。

だから知的障害があるわが子キチノにもキャッシュレスを教えたい!

 

というわけで先日はキャッシュレスでの支払い方をキチノに教えてみました。

前回「支払い」だけ教えてみた

教えたけれど…

細かい話ですが、キャッシュレスを教えるということは、正確にはキャッシュレスを使った買い物を教えるということです。

つまり「買い物」と「支払い」という2つのステップを教える必要があるのです。

さらに知的障害者の場合は、その2つのステップをさらに細かく分けた小ステップの1つ1つをマスターしないといけません。

 

「買い物」と「支払い」をいっぺんにマスターするのはさすがに困難です。

なので前回は「支払い」だけ手取り足取り教えてみました。

手応え全くなし!

Paypayの個人間送金を使って、キャッシュレスの送金の仕方を3日間教えました。

 

ですがキチノの頭には「?」がいっぱい。

まったく手応えがありませんでした^^;。

 

おそらくお金を払っているというより、言われるままになにかの操作をした、という印象なんでしょうねぇ^^;。

今回はお店屋さんごっこまでをしてみよう!

というわけで今回はお店屋さんごっこをしてみます。

お買い物の本質は「お金と引き替えに欲しい物が手に入る」ということ。

「欲しい物が手に入る」という喜びを知れば理解も違うかもしれません。

いろんなステップをクリアしなければなりませんが、習うより慣れろという言葉もあります。

 

知的障害ある自分の子供たちは、キャッシュレスでのお買い物をどこまで理解できるのでしょうか?

 

このシリーズでは、知的障害あるわが子キチノに教えてみたことと、その結果についてお話します。

今回はキャッシュレスを使って、お店やさんごっこをしてみました。

お店屋さんごっこをやってみた

お店やさん準備!

きちほーしがお店屋さんになって、それをキチノに買ってもらうようにします。

キチノの興味をひくために、キチノが好きなお菓子を商品にします。

キチノには普段から別にお菓子を与えていますので、追加のお菓子という位置づけで50円以下の駄菓子を扱うようにします。

 

お菓子の値段は10円単位。

現実のお店では消費税も扱うので11円とかにしようかどうかも迷いましたが、まずは10円単位としました。

 

商品棚の代わりに手のひらサイズのカゴを3~4個用意して、各カゴには「1こ30えん」などと書いたラベルを貼ります。

 

お店やさん開店!

キチノには毎日20分程度算数や読み書きを教える時間を設けています。

この時間にお店やさんごっこをします。

 

テーブルの上にお菓子を入れたカゴを置いて、きちほーしがいいます。

 

「キチノ!お菓子屋さんだよ! お菓子あるよ!」

 

いきなりの開店にキチノはキョトンとしていましたが、くどくど説明したところでキチノは理解しません。

キチノの場合は何度か体験して覚えてもらうことが大事。

 

キチノはキョトンとしたままでしたが、きちほーしはかまわず進めました。

まずは持ち金の説明

きちほーしは構わずキチノに持ち金の説明をしました。

お金を払った後で、自分の持ち金が減っていることを確認させるためです。

 

Paypayを開いて残金が書かれているのを見せました。

 

きちほーし「キチノ、お金はいくらある?」

キチノ「ごじゅーえん!」

 

これまで残金については教えてきたので、今回もさすがにすぐさま答えました。

もっともこれが手持ち金であることを本当に理解できているかは怪しいですが…。

 

きちほーし「そう!50円あるね。キチノは50円だけお菓子が買えるよ。」

キチノ「?」

 

理解しなくても構わず進めます^^。

 

お菓子を選んでもらう

きちほーし「(お菓子が入ったカゴを指しながら)キチノ、好きなお菓子ある?」

キチノ 「?」

きちほーし「お菓子買えるよ」

キチノ 「???」

きちほーし「ほら、コレ好きじゃない?」

 

きちほーしはキチノが一番すきそうなお菓子を指さしました。

ですがキチノはぜんぜん違う20円のお菓子を4つ選びました。

今思うとキチノは今お店やさんごっこをしていることすら理解していないのかもしれません。

カゴを並べただけでお店っぽくないし、店員は自分の親だし。

お菓子を選んだのも自分がお菓子をほしいと言うより、きちほーしが選べ選べと言うから仕方なく選んだのかもしれません。

 

いろいろ失敗を実感しましたが、とにかく先に進めました。

支払額を計算してもらう

キチノの手持ち金は50円。

キチノが取ったのは20円のお菓子4つ。

いきなり予算をオーバーしました。

 

ここできちほーしは「それじゃ買えないよ!」と結論は言わず、キャッシュレスで支払えないことを体験してもらおうと思いました。

 

きちほーし「これがほしいの?わかった。じゃぁ何円になるかな?計算してみよう」

きちほーし「20円が4つで…、いくら?20かける4は?」

キチノ 「?」

 

きちほーしは電卓を取り出してキチノに計算をしてもらいました。

この時気づいたのですが、キチノは電卓で足し算引き算をしたことはありますが、掛け算をしたことはありません。

ともかくきちほーしの言うがままにキチノは電卓を操作しました。

 

きちほーし「20かける4は?に…ぜろ…かける…4…は?なんて書いてる?」

キチノ 「はちじゅー?」

きちほーし「そう!80円です。じゃぁキチノ、80円ください!」

 

送金してもらう

きちほーしのスマホにPaypayのQRコードを出しました。

 

きちほーし 「じゃぁココ(きちほーしのQRコード)をスキャンして。(キチノPaypayの)『スキャン』をタッチして…。80って入れて…。送金ボタンを押して…。」

 

キチノは言われるままに送金操作をしました。

支払額が残金をオーバーしていたので支払えないはずです。

 

ですが送金操作した後で支払えたのか支払えなかったのかよくわかりませんでした。

スマホ画面の下の方に小さく「残高が不足しています」と表示されるだけで、画面に大きな変化がなかったからです。

 

とにかくきちほーしは支払えなかったことを伝えます。

 

きちほーし 「これはね、お金払えてないんだよ。キチノが持ってるお金より多いからね。」

キチノ 「?」

きちほーし 「50円より少なくすると買えるよ。お菓子を減らすと買えるよ。」

キチノ 「??」

きちほーし 「ほら、この20円のお菓子2つだったら買えるよ。」

 

ということでキチノは言われるがままに20円のお菓子2つを差し出しました。

 

やっとお買い物完了!と思ったら…

その後、上と同じような感じでキチノに電卓を使って支払額40円を計算してもらいました。

そしてPaypayで40円送金してもらいました。

 

きちほーし 「はい、お買い上げありがとうございました!じゃ、このお菓子、食べてもいいよ。」

 

ですが、キチノはそのお菓子をきちほーしに返してしまいました。

 

きちほーし 「キチノ、これはキチノのお菓子だよ?お金を払ったんだから、キチノが食べていいんだよ?」

 

お菓子をキチノに渡しますがやっぱり返してきます。

どうも自分のものになったと思っていないようです。

 

ものを買うことで自分のものになることを実感してもらいたいのです。

キチノは何度も返してきますが、きちほーしも何度も渡し返して、強引に持たせました。

 

何日かやってみたけど…

その後何日かお店やさんごっこをやってみましたが、手応えがありません。

キチノはお金を払っていることも実感していないようですし、お菓子も返してしまいます。

考察

 



何が原因なのでしょうか?

原因は色々考えられます。

お菓子を返してしまうのはなぜ?

節のタイトルに「なぜ?」と入れつつも、じつはやる前から予想はしていました。

お店やさんごっこで得られるお菓子は、いつものお菓子の追加分。

つまりこれが無くてもキチノの日常からお菓子は消えません。

だからたとえ好きなお菓子であっても、そんなに興味がなかったのではないでしょうか。

送金を理解してないのはなぜ?

キチノは言葉でのやりとりができないで予想でしかありませんが、どうもお金を払っていることを理解していないように見えます。

どちらかというと、電卓を操作した感覚に近いんじゃないでしょうか。

 

 

なぜでしょうか?

 

考えられるのは3つです。

キチノはすでに現金になじんでしまっている?

中国や韓国ではキャッシュレスが当たり前で現金を知らない人が多いと聞きます。

つまり人生で初めて見たお金はキャッシュレスのはずです。

だったらキチノにもいきなりキャッシュレスを教えてもなじむだろうと思っていましたが、どうもそうではなさそうです。

 

キチノが通う障害者施設では、本物のお店(店員は施設の人)で現金を使ってお買い物の練習をしていると聞きます。

だからキチノは現金ではない「キャッシュレス」というものを理解しづらくなっているのかもしれません。

まだお金自体を理解していない?

もしかしたら現金すら理解していないのかもしれません。

上述の通り施設で何度かお買い物の練習をしていますが、それでもまだ理解しきれていないのかもしれません。

お店屋さんだと理解していない?

本物のお菓子屋さんでお買い物をする時、キチノは棚のお菓子をきちほーしにあずけます。

つまり、本物のお店では、品を選ぶ→レジで何かする→自分のものになる、という手順は理解しているのです。

 

今回は「レジでなにかする」をきちほーしでなくキチノがやることになったものの、その他の流れは本物の店と同じです。

 

それでも理解できないということは、きちほーしが開いたお店をお店と理解できていないのかもしれません。

 

確かにテーブルにカゴを並べただけだし、レジもなければ買い物かごもありません。

おまけに店員はエプロンもなにもしない部屋着の親だったりします。

やることが多すぎて理解が追いつかない?

やっぱり「買い物」と「支払い」を一度にやるのは頭が追いつかなかったのかもしれません。

「買い物」と「支払い」それぞれのステップを細分化するとこんな感じです。

[A.買い物のステップ]

  1. 持ち金を把握する
  2. 商品を選んで買い物カゴに入れる
  3. 買い物かごの合計金額を確認する
  4. 合計金額が持ち金を超えないことを確認把握する

[B.支払いのステップ]

  1. Paypayアプリを起動する
  2. 「スキャン」を起動してお店のQRコードを読み込む
  3. 支払金額を把握する(店員に金額を告げられるなど)
  4. 送金額を入力する
  5. 送金操作をする

今回キチノはA-3, A-4をしなかったために予算オーバー。

その結果「買い直し」のステップも追加されました。

これでさらにキチノの頭はキャパシティオーバしてしまったのかもしれません。

おわりに

まとめ

わたしたち知的障害者の親は、自分の子供たちにどこまで教えていくことができるのか?

そのヒントにするべく、知的障害あるわが子キチノに対する教育の試みと、その結果についてお話ししました。

 

今回はキャッシュレスを使ったお店屋さんごっこを教えた結果についてお話しました。

 

3回ほどやりましたが、結局手応えありませんでした^^;。

原因はすでに現金になじんでしまっているからかもしれませんし、お金そのものが分かってないのかもしれません。

きちほーしのお店をお店と理解してないのかもしれませんし、色々ありすぎて頭が追いついてないのかもしれません。

今後の展開

今後はもう少しキチノになじみ深い環境からスタートしてみようかと思います。

つまり、キャッシュレスではなくいったん現金でお店やさんごっこをします。

買い物もなるべく「買い直し」が発生しないように誘導してステップを少なくするとか、買い物かごを用意するなどなるべく本物のお店に近づけるとか。

これでキチノが混乱する要因をなるべく少なくして、一つ一つの問題を解決していくといいのかなと思います。

 

というわけで次回は現金でお店屋さんごっこをやってみます。

ではまた!

おまけ

(今週のお代「心に残る店員さんとのお買い物のエピソード」

ここではきちほーしのことをよく知ってもらうため、はてなブログの「今週のお題をヒントに、本題と少し外れたお話をします。

今週のお題は「心に残る店員さんとのお買い物のエピソード」です。

 

このお題はビックカメラとのコラボみたいなのでそっち系のお話ができればいいのですが、残念ながらありません。

 

家電店でもなくきちほーしが心に残ったのは障害者さんが働くごはん屋さん。

「ここって障害者さんが働くお店ですよね。ウチの子も実は障害があって…」と言うと店員さんは大張り切りでお話してくれました。

ちなみにその店員さんは支援している人で健常者です。

 

「ウチはこんなことをしています!発達障害の子はこんな仕事をしていて、知的障害の子はこんな仕事をしていて!それで、それで…」とか。

「これウチで出してる会報です。よかったらどうぞ!」とか。

目を輝かせてグイグイお話しいてくれます^^。

 

いくつかのお店でお話しましたが、ほとんどのお店でこんな感じでした。

もっと頑張ってもらいたいですね^^。