
迷走を始めたプロジェクトのゴールを探し、私は上司との対話に臨んだ。
しかし、そこで私を待っていたのは、さらなる混乱と、心のすれ違いだった。
「正直、がっかりしたよ」
それは、私が良かれと思って改善した、別の定例レポートに対する上司の一言だった。
言われた通りにやったはずなのに、なぜ? 疑問が頭をよぎる。
「なんで言われた通りにやるんだ!」
「だって、言われた通りにやらないと怒るじゃないですか!」
まるで禅問答のような、噛み合わない会話。いつしか議論は本質からずれ、「コミュニケーションが足りない」「だから出社しろ」という、お決まりの精神論へと着地していく。
これは、単なる業務報告ではない。言葉の裏に隠された意図を読み解き、上司の「本当のゴール」を探り当てる、スリリングな心理戦の記録だ。果たして、この不毛なループから抜け出すことはできるのだろうか――。
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- デジャヴ:再び始まる「とりあえずやれ」
- 終わらない禅問答:『なぜ書いた?』『指示があったからです』
- もう一つの戦場:月次レポートを巡る攻防
- 『がっかりした』の衝撃:良かれと思った改善が、なぜか裏目に
- エピローグ:見えたゴールの先に、道はあるのか
- おまけ
デジャヴ:再び始まる「とりあえずやれ」

迷走を始めたプロジェクトのゴールを探し、私は上司との対話に臨んだ。
しかし、そこで私を待っていたのは、さらなる混乱と、心のすれ違いだった。
翌日、課長は私にこう切り出した。
「昨日、新しいプランの説明を受けたんだろ?どうだった?で、今後どうするんだ?」
それは、検討中のリスク管理システムが提供する、廉価版プランのことだった。
従来プランは、私たちの要求をほぼ満たすが、費用がかなり高い。
一方、新プランは費用こそ抑えられているものの、求めていた機能の三分の一ほどが削られていた。
「コスト的には新プランですが、機能的に問題ないか、現場担当者に確認したいです」
私は、そう答えた。
まずは、機能が削られても業務が回るのか、現場の意見を聞くのが筋だろう。
すると、課長は少し苛立ったように言った。
「その人件費の計算に、現場の緊急対応の工数は入ってるのか?」
「いいえ。でも、先日ご指示があったので、今後はそれも入れて再計算するつもりです」
私はそう答えるしかなかった。
彼自身が、部門会議で費用対効果を指摘されて問題になったはずなのに。
なぜ、また同じ話を蒸し返すのだろう。
「わかった。じゃあ、既存の比較表に、新プランの情報も追加してくれ」
そう言って彼は、2社のサービスを比較した資料を指さした。
「……はぁ」
また、目的のわからない指示だ。
私は、思わず気の抜けた返事をしてしまった。
私の様子を察したのか、彼は付け加えた。
「それをチーム会議にかけて、みんなの意見を聞くんだ」
それでも、私にはその意図が飲み込めなかった。
機能が削られたプランを、そのまま資料に追加したところで、誰が良し悪しを判断できるというのだろう。
まずは、この新プランで業務が回るのか、具体的なプロセスを設計し、現場に確認すべきじゃないのか。
「あなたはどうするつもりなんだ?」
沈黙する私に、課長が問いかける。
私は、自分の考えを正直に伝えた。
「新プランを前提とした業務の流れを考えて、現場担当者に妥当性を確認してから、皆さんに共有したいです」
しかし、何度かのやりとりの末、結局「まず一覧表をまとめろ」という彼の指示が通った。
私は、またしても彼の思考を理解できないまま、ただ従うしかなかった。
終わらない禅問答:『なぜ書いた?』『指示があったからです』

議論は、さらに迷走を深めていく。
私は、自分の立ち位置がわからなくなり、思い切って聞いてみた。
「私の使命は、このシステムの要不要を判断し、必要なら最適なものを選ぶことだと思っています。
この認識は、合っていますか?」
「システムの導入がゴールじゃない、と前に言っただろう。皆が楽になることがゴールだ」
課長はそう答えた。
「楽になることがゴールでも、費用に見合う、というのが前提ですよね?」
私が食い下がると、彼は質問を質問で返してきた。
「じゃあ、なんで現場は、このシステムが欲しいと言っているんだ?」
「それは、コストはさておき、作業時間や人的ミスを減らしたいからです」
「だったら、その路線で進めればいいじゃないか。時間短縮の効果を、人件費で計算すればいい」
「はい。そうするつもりです」
話が、堂々巡りをしている。
彼は、まるで独り言のように続けた。
「そもそも、上層部は『費用対効果がない』と判断したわけじゃない。
判断できる材料が、まだ揃ってないだけなんだ。
それなのに、あの報告会で、あんな少ない金額を書かれても困るんだよ」
その言葉に、私はカチンときた。
「私も、本当は書きたくありませんでした」
「なぜ書いた?」
「……書くように、指示があったからです」
一瞬の沈黙。
気まずい空気を断ち切るように、彼は言った。
「やっぱり、コミュニケーションが足りないな。出社してもらった方がいい」
またその話か。
私は、うんざりしながらも反論した。
「定期的に打ち合わせをすればいいだけです。出社すれば解決するとは思えません」
「私が仕事の邪魔をしているのはわかっている。もっとみんなで話して、どんどん進めてほしいんだ。
だったらもう、毎日小さなゴールを決めて、日々報告する、というやり方がいいのか?」
まるで新入社員1年目に対するような言い方。
彼の言葉は、もはや提案というより、脅しのように聞こえた。
私は、ただ「そうかもしれません」と、力なく答えることしかできなかった。
もう一つの戦場:月次レポートを巡る攻防
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話は、全く別の業務に飛んだ。
私が毎月作成して部門内に展開している、業務レポートについてだ。
以前、彼はこのレポートの提出プロセスを変更するよう指示していた。
「レビューしてから展開するように」
しかし、「レビューして」としか言われなかったので、私は前任の先輩にやり方を確認した。
どうやら、グラフに注釈をつけ、口頭で簡単にサマリーを話す、というものだったらしい。
私は、口頭説明のカンペ代わりに、レポートの冒頭にサマリーページを追加することにした。
そして、事前に課長にメールで確認した。「こんな感じで良いですか?」と。
そして課長は「サマリーはこのフォーマットに沿って書いてほしい」とフォーマットを送ってきた。
私はそのとおりに作業をして再提出した。
しかし、それに対する彼の反応は最悪だった。
「このサマリーは、ちゃんとやっていると言えるのか?」
システムの話で責められた直後だった。
彼は、私が作ったサマリーページを画面に映し出し、怒りをにじませながら言った。
「このサマリーを見て、正直がっかりしたよ。なんだか、私が言ったからそのまま書きました、という印象しかない」
「え? そうですよ?それが要望ですよね?」
私の率直な答えに、彼は一瞬言葉を詰まらせた。
「……だから、わたしの伝え方がまずかったんだな、と思ったよ」
『がっかりした』の衝撃:良かれと思った改善が、なぜか裏目に

彼の不満の理由は、こうだった。
私が作ったサマリーページには、業務データの数値の騰落率を示した「一覧表」と、その背景を解説した「文章」が載っていた。
彼は、その「文章」が、なぜ「一覧表」そのものの解説ではないのか、と指摘したのだ。
「数値が上がった、下がったと表にあるんだから、それについて書くべきじゃないか?
なのに君は、数値変動の『要因』についてまとめている。どういうことだ?」
私には、彼の指摘の意味がわからなかった。
「一覧表を見れば、数値の騰落は一目瞭然です。
だから、サマリーでは、表にはない情報(要因)を補足すべきだと思いました」
「それは、その時に言ってほしかった」
「……それは、要望に合わなかった、というだけのことですよね?」
私は、必死に自分の正当性を主張した。
「私は、課長の要望に合わせて成果物を出すのが仕事だと思っています。
それは、私の思いよりもずっと優先される。
それで『違う』と言われれば、それは認識の齟齬があった、と思うだけです」
しかし、彼は納得しなかった。
「相手に見やすいように、という思いが感じられなかった。期待していたのに、がっかりしたよ」
「だから、変えたつもりです!」
私も、つい声を荒らげてしまった。
「以前、レポートを旧来の形式から変えてレポートを出したら『旧来の形式がいい』と言われたじゃないですか。
だから、皆さんは今までのやり方を望んでいるんだと思って、変えないようにしたんです!」
「そうじゃないんだよ。どんどん変えていってほしいんだ」
どっちなんだ?
変えろと言うから変えれば、元に戻せと言う。
変えないでいると、なぜ変えないんだと怒る。
私は、もう何が正解なのか、全くわからなくなってしまった。
エピローグ:見えたゴールの先に、道はあるのか
1時間半にも及ぶ、長い長い対話だった。
最後に、彼はポツリと、このレポートの本当の目的を口にした。
「私は、この資料を使って、部外の人たちに報告することがあるんだ。
その時に、『今回はこういう理由で、この資材の価格が動きそうです』と説明するために使いたいんだよ」
なぜ、それを最初に言ってくれないのか。
私は、脱力感と、わずかな安堵を覚えた。
結局、彼は私に、いくつかのヒアリングを指示した。
レポートがどう使われているのか、聞いてこい。
ついでに、リスク管理システムの話もしてこい、と。
長い対話の末に、ようやく見えた、ぼんやりとしたゴール。
しかし、このゴールも一見良さそうに見えるが、彼が以前提示したゴールとバッティングする面もある。
まだ全然安心できないけど、これを確認しようとするとまた禅問答が起こるであろうことを考えると…。。
私は、この迷宮から、無事に抜け出すことができるのだろうか。
今はまだ、その答えを知る者は誰もいない。
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おまけ
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(お題「気分転換」)
ここではきちほーしのことをよく知ってもらうため、はてなブログの「今週のお題」をヒントに、本題と少し外れたお話をします。
今週のお題は「気分転換」です。
後編のようなことがあって、まさに気分転換がしたいところです。
こんなときにやるのは散歩や買物くらいがちょうどいいと思うのです。
あとは…、ズル休み!