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アール・ブリュットに学ぶ、障がい者の自立への道1 – 書籍「障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。」5

自律的に働く障害者たちにスポットを当てた書籍「障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。」についてグッと要約して紹介します。

今回から次回、次々回にかけて、書籍の中で、障がい者たちが取り組むアート活動であるアール・ブリュットとそれを世に展開したアートミュージアムNO-MAについてお話します。

 

障がい者がアーティストとして活躍するにはどうすればいいのか?

障がい者アーティストをどうサポートしていけばいいのか?

障がい者をアーティストとしての可能性を見出すヒントになればと思います。

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書籍概要

タイトル

障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。 ソーシャルファームという希望

発売日

2020/03/17

著者

姫路まさのり

概要

障がい者は低賃金が当たり前って、おかしくない?
予約の取れないフレンチレストラン、年商2億円、奇跡のクッキー工場、IT、ワイン醸造にアートetc

「稼いで自立」の成功例を紹介する、とっても大事な「お金」の話。

目次

  • CASE1 10万円で働き方が変わる ──予約の取れないフレンチレストラン──
  • CASE2 生きがいの分配 ──年商2億円に届いた奇跡のクッキー──
  • CASE3 福祉×芸術=アール・ブリュット ──試みの先にあるもの──
  • CASE4 ワインとIT ──本当の自立とは何か──

本記事の範囲

この記事では「CASE3 福祉×芸術=アール・ブリュット ──試みの先にあるもの──」の一部を要約してお話します。

アール・ブリュットとは

アール・ブリュットとは、フランス語で「加工されていない芸術」を意味し、正規の美術教育を受けたことのない人が自由に創作した作品を意味します。

その起源は1940年代にフランスの画家ジャン・デュビュッゲが精神科病院等から独創的な作品を集めまわったのが始まりと言われています。

2020年東京パラリンピックにの際にも障がい者アートの展示、商品化などが進められのを皮切りに、日本のアール・ブリュットが世界でも注目されています。

澤田真一さん

澤田真一さんは日本アール・ブリュットの代表的な存在です。

自閉症と知的障害を持つ陶器作家で、バイヤーから高値で買い取られるケースが相次いでいます。

彼は、普段はパン作りをしていますが、作品は高い評価を受け、ベネチア・ビエンナーレに選定されるなど、国内外で注目を集めています。

(澤田真一さんの作品例はこちら

きちほーしも澤田さんの作品をひと目見て「すごい…」という感嘆の声が漏れました。

ボーダレス・アートミュージアムNO-MA

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/8c/Borderless_Art_Museum_NO-MA_1.jpg/450px-Borderless_Art_Museum_NO-MA_1.jpg

澤田さんの作品をはじめ、日本のアールブリュットの作品を世に展開してきたのが、滋賀県近江八幡市の「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」です。

2004年の開館以来の通算来場者は10万人を超え、出展者には世界的に活躍するアーティストもいれば、精神病院で暮らす人もいます。

例えば視力を失った陶芸家の徳山彰さんや、絵画やオブジェの山崎菜那さんなどがいます。

障害者は日常的に何らかの不自由さを乗り越えようとする創意工夫が必要になります。

だからこそ健常者とは異なる捕らえ方や感性を持ち得るのです。

NO-MA創設者 北岡賢剛

障害者施設を全国行脚

NO-MAを創設したのは社会福祉法人GLOW理事長の北岡賢剛さん。

北岡さんの出身は福岡。

その行動力はすさまじいもので、学生時代アルバイトで稼いだお金で全国の障がい者施設100箇所以上を訪ね歩いたとのことです。

そして1985年に滋賀県にある社会福祉法人信楽青年寮」の職員となりました。

信楽青年寮」は入所施設でありながらほとんどの利用者が陶器工場に働いているのを見て、北岡さんはここを選んだそうです。

映画で活動をアピール

信楽青年寮では利用者の職場開拓や賃金交渉、グループホーム設立の交渉などの活躍を見せていた北岡さんですが、特に興味を示したのが陶芸活動でした。

元々余暇活動として行われていたのですが、北岡さんは作品を見て感動。

その感動を伝えたいと北岡さんは1990年映画「しがらきから吹いてくる風」を制作し、各地で1000回以上上映されたとのことです。

障害者福祉の父 糸賀一雄

糸賀一雄

なんの縁か北岡さんが障害者福祉の道にすすむきっかけになったのも滋賀県

1946年に知的障害児らの教育・医療が不十分であることを憂いて滋賀県大津市福祉施設「近江学園」を創設した糸賀一雄さんです。

糸賀さんは西日本初の重症心身障害児施設「びわこ学園」も設立され「障害者福祉の父」と呼ばれています。

子供の素材を伸ばそうという意味を込めた「この子らを世の光に」という言葉を作った人としても有名です。

近江学園には木工製品を作る木工科と茶碗・造形作品を作る窯業科があり、北岡さんが門を叩いた「信楽青年寮」もその影響を受けているのかもしれません。

余談ではありますが、信楽青年寮があるその地は「がんばカンパニー」の中崎ひとみさんの出身地でもあるとのことです。

社会福祉法人オープンスペースれがーと」設立

2000年に北岡さんは信楽青年寮を退職し、2001年に遮断福祉法人オープンスペースれがーとを立ち上げます。

ここでは24時間ホームヘルプサービス兼アトリエを設けました。

さらに東京・銀座のギャラリーで信楽青年寮の作家と他の陶芸作家のコラボレーション展を展開し、全作品を売り切ることができました。

北岡さんは彼らの作品の魅力に気づいてくれる人がいることを実感し、「障がい者だから」ではなく作品を正しく評価してもらう場を作りたいと思ったそうです。

滋賀県知事・國松善次との出会い

そして北岡さんは滋賀県知事の國松善次さんと出会います。

國松さんは知事になる前に県立美術館館長や健康福祉部長などを歴任し、障害者たちが表現できる美術館を創りたいと思っていました。

そうして福祉の一環でしかなかった障害者アートを美術作品に引き上げようと、NO-MAの立ち上げに奔走していくのでした。

NO-MAの信念

才能は障害を克服しないと発揮できないものではない

「障害者の作品を展示すると美術館の品格が疑われる」と言われた時代でした。

しかし北岡さんらは次のようなことを社会に投げかけたいと、信念をもって突き進みます。

障害者の才能は障害を克服しないと発揮できないものではない。

彼らの才能は彼らが持っている力そのままで発揮されるべきだ。

障害者の奇行も視点を変えれば芸術の「表現力」

 

 

 



NO-MAに展示したアーティストの中に、ラーメンの袋を触っていないと落ち着かない人がいます。

健常者から見れば奇行なのでしょうが、ラーメンの袋をズラッと並べればアート作品になります。

 

また紙を細かく切り刻まないと気が済まないという行動も健常者から見れば奇行なのでしょうが、アートの観点では表現行動と言い換えることもできます。

 

「周りの人が自分の悪口を言っている」「誰かが自分をずっと見ている」。

そんな幻聴や妄想に悩まされる精神障害の悩みは健常者の発想にはありません。

これを「幻想妄想かるた」と銘打つことでまた芸術表現となるのです。

 

(つづく)

きちほーし感想

「才能は障害を克服しないと発揮できないものではない」について

NO-MA創設者の北岡さんらの信念にとても共感します。

今の世の中は障害者をなんとか健常者の社会になじませようと、健常者の作ったマナーに従わせようと障害者を抑制させる風潮があるように思います。

大人たちはなんとか子どもたちの奇声や奇行を押さえつけ、健常者向けの仕事のスキルを身に着けさせようとしていると思います。

そうしないと社会から冷たい視線目を浴びせられ、仕事もろくにできないので仕方ないのですが。

障害者が障害者のままで、むしろ障害者ならでは特性を生かして、堂々と生きられる世の中になってほしいです。

 



「障害者の奇行も視点を変えれば芸術の表現力」について

これはきちほーしも勇気と希望をもらいました。

きちほーしの子どもキチノも奇行をします。

それはぬいぐるみの手と手をつなげてただ並べるというとても可愛らしい奇行です。

大きいぬいぐるみが小さいぬいぐるみを抱きかかえているかのように並べる奇行もあります。

きちほーしは「かわいいじゃん!」と思いつつも、この奇行を愛せるのは親だけだろうなと思って一般に公開しようとは思ってもいませんでした。

 

言ってしまえば自閉症児のよくある行動なのでしょうが、このぬいぐるみをただ並べるということも、もしかしたら芸術に昇華できるのかもしれません。

 

おまけ

今週のお題「盛り」)

ここではきちほーしのことをよく知ってもらうため、はてなブログの「今週のお題」をヒントに、本題と少し外れたお話をします。

今週のお題は「盛り」です。

きちほーしは話を盛るのが苦手。だから話を盛れる人はすごいなーと思います。

話を盛るということはハッタリができるということですから、交渉事がとても上手だというイメージがあります。

逆にきちほーしのパートナーのキチパは話を盛ることができます。

だから交渉事でもキチパの主張が通ることがよくあります。

傍で聞いているきちほーしからすれば、そんな論調でよく通るな!?と感心します。

たまに盛りすぎて「そんなわけあるかい!」とツッコみたくなるのですが、それでも愛嬌を感じるのが才能だなと思うのです。