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【一般就労できるかな?】障害者雇用の現状3 -書籍「発達障害と仕事」3-

このシリーズでは障害者の一般就労の現状をまとめたムック本「 発達障害と仕事」についてグッと要約してお話します。

知的障害を持つウチの子は将来どんな仕事につけるんだろう?

気になる親御さんはぜひご参考ください。

今回も前回に引き続き、障害者雇用の現状についてお話します。


発達障害と仕事 発達障害者の自立・就労を支援する本 (親子で理解する特性シリーズ) [ 宮尾 益知 ]

アイスブレイク

今週のお題ビフォーアフター」)

アイスブレイクではきちほーしのことをよく知ってもらうため、はてなブログの「今週のお題」をヒントに、本題と少し外れたお話をします。

今週のお題は「ビフォーアフター」です。

よーするにこの1年でどんな変化を経験したか?だそうです。

 

う~ん。

一番大きいのは自動車を買ったことですかねぇ。

それまではカーシェアを使っていたのですが、車を持つことによって明らかに行動範囲が広がりました。

ただ、だから良かったのかというと、ちょっと頭を整理する必要がありそうですね~。

関連記事

本記事の範囲: p12~p21

この記事では本書籍のp6~p11の「特例子会社が増えている理由」「発達障害者の雇用が多い企業も増加」について要約してお話します。

なお、本書籍には発達障害者・身体障害者についても触れていますが、ここでは知的障害者に絞ってお話します。

知的障害者雇用の現状(つづき)

産業区分別の雇用者数(*きちほーし調査)

内閣府の資料を基に、知的障害者がどの産業分野に就職しているのか平成29年、令和3年の状況を調査しました。

ここでは各年の上位4つをピックアップしています。

上位4つはどの年も製造業、卸売・小売業、医療・福祉、サービス業で順位が変わっていません。

知的障害者の全雇用者に対する割合もほとんど変わっていません。

ここしばらくは同様の傾向が続くと思われます。

産業区分 a.重度知的障害者 b.重度知的障害者である短時間労働者 c.重度以外の知的障害者 d.重度以外の知的障害者である短時間労働者 合計(*2) 知的障害者の全雇用者に対する割合(*3)
製造業 5,446 385 18,360 1,009 25,290 24.9%
卸売業,小売業 2,956 758 13,781 3,670 21,165 20.9%
医療,福祉 3,011 1,576 9,338 6,119 20,044 19.7%
サービス業 2,656 315 6,391 1,061 10,423 10.3%
平成29年 産業区分別の知的障害者雇用状況(抜粋)
産業区分 a.重度知的障害者 b.重度知的障害者である短時間労働者 c.重度以外の知的障害者 d.重度以外の知的障害者である短時間労働者 合計(*2) 知的障害者の全雇用者に対する割合(*3)
製造業 6,544 514 24,854 1,451 33,093 25.5%
卸売業,小売業 3,412 726 17,602 4,793 26,533 20.4%
医療,福祉 2,920 1,861 11,237 9,314 25,332 19.5%
サービス業 3,123 418 8,353 1,535 13,429 10.3%
令和3年 産業区分別の知的障害者雇用状況(抜粋)

(*2)なお、内閣府の「障害者の状況」の合計では法律に則り「a.重度知的障害者」1人を2人、「d.重度以外の知的障害者である短時間労働者」を0.5人にして合計しています。

ここでは普通に人数を総計していますので、内閣府の合計値とは異なります。

(*3)各年度の知的障害者雇用者数(平成29年:101,507人、令和3年:129,889人)に対する割合です。

職業別の就職状況(*きちほーし調査)

本ムックによれば平成29年度の職業別の割合は、生産工程従事者が25.6%、運輸・清掃・包装等従事者が21.9%だそうです。

もう少し詳細な状況を知りたいのですが、出典が不明なのでわかりません。

ハローワークによる知的障害者の就職状況

職業別割合が分かる資料を見つけたので(2017年の資料2021年の資料)参考までに掲載します。

ただし、ここでは雇用者数ではなくハローワークを通じて就職した人の数ですのでご注意ください。

  2017年(%) 2021年(%)
管理的職業 0.01 0.005
専門的・技術的職業 1.3 1.4
事務的職業 8.4 9.6
販売の職業 6.1 6.4
サービスの職業 14.3 14.1
保安の職業 0.4 0.6
農林漁業の職業 3.8 4.5
生産工程の職業 16.1 15.1
輸送・機械運転の職業 0.6 0.7
建設・採掘の職業 1.2 1.3
運搬・清掃・包装等の職業 47.8 46.2
分類不能の職業 0.0 0.0
知的障害者の職業別の就職状況

就職件数はどの年も20000件前後です。

割合は年によって変わるものの、順位はほんど変化なさそうです。

どの年も約半分ほどが「運搬・清掃・包装等の職業」で圧倒的1位です。

ついで生産工程、サービス、事務といったところでしょう。

個人的にどの年も「管理的職業」が1~2人いることは意外でした。

重度の就職者数は知的障害者全体の1/6~1/8

令和3年は重度知的障害者の就職状況も公開されています。

職業によって異なりますが、就職した知的障害者全体のおよそ1/6~1/8ほどでした。

 

SACEC畠山氏による知的障害者の現状

これまでは数字で障害者の雇用状況をお伝えしてきました。

ここではSACEC畠山氏の目から見た知的障害者の現状についてお話します。

知的障害者の作業内容

作業内容は以下のとおりです。

  • 清掃業務、パソコン入力、総務部庶務・管理部、事務用品の備品管理、研修レポートの入力作業が多い。
  • 銀行では案内状などの郵便の発送業務、調査レポートの封入発送が多い。
  • 過去の紙の書類を電子データにしてテキストにして保存する。

知的障害者の働きぶり

そして働きぶりは以下のとおりです。

  • 知的障害者は書類の中身に興味がなく淡々と仕事をしてくれる。とても早くて正確。
  • メーカーでは細かい部品の組立作業は知的障害者は得意。健常者は苦手。
  • トイレ清掃もここまでやるんだというくらい非常に丁寧。

 

単純作業ばかりですが、作業の品質は健常者よりも良さそうな印象ですね。

 

 

ただし、知的障害者だらと一括りにするのはよくない。

特性は全員違い、仕事の精度も異なる。

 

おわりに

まとめ

いかがだったでしょうか。

前回と今回とで、「特例子会社」と障害者雇用の現状についてお話しました。

  • 障害者雇用企業支援協会(SACEC)という、企業向けの障害者雇用支援をする団体がある。
  • 精神障害者の勤続年数は短く、身体障害者の雇用数は減少傾向だが絶対数は多く、知的障害者は増加傾向。
  • 特例子会社の問題点は以下の通り。
    • 人材不足・仕事不足
    • 人事管理制度が不十分
    • 障害者向けの在宅勤務体制の整備が不十分
    • 精神障害者向けの支援体制が不十分
  • 知的障害者の雇用・就職状況は以下の通り。
    • 一般就労できるのは全体の20%だけ。
    • 産業別では、製造業、卸売・小売業、医療・福祉、サービス業、が上位4つ。
    • 職業別では、運搬・清掃・包装等が大半。次いで生産工程、サービス、事務が多い。
    • 重度の就職者数は知的障害者全体の1/6~1/8
  • SACEC畠山氏による知的障害者の状況
    • 作業内容は、清掃業務、パソコン入力などの単純作業がほとんど。
    • 作業品質は、健常者以上に早くて正確な傾向がある。

感想

知的障害者の在宅勤務について

ハローワークによる知的障害者の就職状況を見ると、知的障害者は現場作業がほとんどですが事務作業も少なからずあります。

事務作業は在宅勤務で行うことも可能な職種です。

 

事務作業の知的障害者たちは在宅勤務できているのでしょうか?

というのも、うちのキチノもそうですが、知的障害者は環境の変化にとても弱い傾向があるからです。

それまで通勤していたのが急に在宅になっても、馴染むまでにかなり支援してもらわなければならないでしょう。

支援校の新卒者も同様で、支援校では対面教育が中心なので(*4)、就職後はかなり支援してもらわないと在宅勤務に馴染めないと思うのです。

(*4)少なくともきちほーし家の近隣の支援校は対面教育が中心です。

 

支援校にはぜひリモート教育に取り組んでもらいたいと思うのです。

気になる数字

本ムックによれば平成29年の職業別割合の「運輸・清掃・包装等従事者」は21.9%とのことでした。

一方でハローワークによる同年の「運搬・清掃・包装等の職業」の就職件数は47.8%でした。

前者は後者の半分以下です。

もしかして「運輸・清掃・包装等従事者」は就職者の半数ほどが離職しているのでしょうか?

この情報だけでそう判断するのはよろしくないですが、今後調べてみたいと思います。

(参考)書籍概要

タイトル

発達障害と仕事 発達障害者の自立・就労を支援する本 (親子で理解する特性シリーズ)

発売日

2018/4/26

著者

宮尾 益知

概要

発達障害者の自立・就労を支援するための情報を詰め込んだムック本。
障害者雇用の最前線で起きている問題は、発達障害者の雇用を受け入れる企業と、転職を繰り返す発達障害者の就労のマッチングとも言える。
本書はこれらの問題を解決するための情報を網羅している。
障害者雇用を促進したい企業のサポートをしている障害者雇用企業支援協会(SACEC)が示す障害者雇用の現実と未来。
一部上場企業が障害者雇用の受け皿として相次ぎ設立している特例子会社8社のレポートなど、発達障害の人たちがこれから就職するために必要な情報が網羅されている。

目次