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障害者雇用を変えた「福祉の起業家」小倉昌男:成功事例から学ぶ月給10万円の秘訣 - 書籍「福祉を変える経営」ポイントピックップ3

このシリーズでは、宅急便の生みの親である小倉昌男さん(2005年没)の著書「福祉を変える経営」のポイントをピックアップ・要約していきます。

 

今回は、障害者の自立支援に尽力し、月給10万円を実現した小倉昌男さんの成功事例に迫ります。

小倉さんが立ち上げた事業や思想、月給10万円を実現するポイントについて詳しく探っていきます。

障害者の雇用においては、かつては月給1万円が珍しくない時代でした。

しかし、小倉さんはスワンベーカリーを始めいくつかの事業を通じて、月給10万円を実現し、障害者の自立支援の光明を切り拓きました。

その経験から導き出されるポイントを読者の皆さんにお伝えします。

 

小倉さんの著書「福祉を変える経営」のエピソードには、障害者雇用の成功に至るためのヒントが満載です。

共同作業所や就労継続支援施設の経営者、障害者の自立を望む親御さんにとっても、20年前の経験が今でも大いに参考になるでしょう。

 

この記事を通じて、障害者雇用のポテンシャルと成功の鍵を知り、共に障害者の自立支援を考える一助となれば幸いです。

はじめに

 

 

宅急便の父でもある小倉昌男さんは全国の障害者就労施設を対象に「経営パワーアップセミナー」を展開しました。

そして、経営のノウハウを伝授しようと自ら講師として壇上に立つ一方で、説得力を持つために自ら障害者就労事業を開始しました。

 

ここでは、著書「福祉を変える経営」の中から、小倉昌男さんの代表的な事業をピックアップしてお話します。

その代表的な事業とは、スワンベーカリー、スワンカフェ、スワン製炭です。

さらに小倉さんが直接関わったわけではありませんが、小倉さんの古巣ヤマト運輸障害者雇用についてもお話します。

事業を始める前にどんな検討・準備をしたのか、仕事環境はどう整えたのか、実績はどのようになったのか、についてお話します。

 

これらのエピソードには月給10万円を実現する障害者雇用のポイントがたくさん隠されています。

関連記事

小倉さんのことは書籍「障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。」で知りました。

この書籍のピックアップ記事もあるので、読んでみてください。

障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。 カテゴリーの記事一覧 - きちほーし勉強できるかな?

また、「福祉を変える経営」についてはこちらを御覧ください。

福祉を変える経営 カテゴリーの記事一覧 - きちほーし勉強できるかな?

本記事の範囲

第1章「障害者の自立を目指そう!私の福祉革命」の一部を要約してお話します。

事例1:スワンベーカリー



概要

障害者が店舗で働くパン屋さんです。

障害者には健常者と同水準の最低賃金を保証していて、健常者並みに毎日働ける障害者には月150時間の労働で10万円の給与を支払っています。

事業開始前の検討・準備

まず市場を検討しました。

パンは毎日でも消費され、全国どこでも需要があります。

つまりパンはいつでもどこでも稼げる事業なのです。

仕事環境の整備

パンは生地の生産が一番技術が必要なんだそうです。

幸いなことに小倉さんはタカキベーカリーから冷凍生地の技術供与を受けることができました。
生地を解凍機に入れてボタンを押すと自動解凍してくれます。

あとはトッピングや簡単な加工で多種多様なパンにアレンジできるのです。

実際に小倉さんも作ってみて「素人の自分にもできる!障害者にもできる!」と確信しました。


こうして、障害者は技術のいる記事作りを省略し、店舗で生地を解凍・アレンジし、顧客販売に専念するという仕事の仕組みを作りました。

また、障害者のサポートのため、障害者の数と同程度の健常者を店舗に配置しました。

実績

(以下、特に注釈がない限り、小倉さん執筆当時の実績です)

こうしてターゲットを銀座の会社づとめの人たちにして、‘98年に銀座の外れに1号店オープンしました。

1日の平均の来客は400人ほどで、1日の売上20万円ほどを実現しました。

店舗のスタッフ14人の内、健常者が8人、障害者6人の1日3交代制で、障害者も朝の6:30からいきいき働いています。

‘99年十条にオープンした2号店も成功し、自治体の市長や知事から注目・誘致され始めました。

2023年8月現在、店舗は全国に20以上展開されています。

 

事例2:スワンカフェ

概要

スワンベーカリーの店舗内に併設された本格的なカフェです。

事業開始前の検討・準備

まずはスワンベーカリーの赤坂店に展開することにしました。

赤坂店は霞が関ビルや米国大使館が立ち並ぶ日本財団のビルの1階にあります。

東京の赤坂は、カフェの激戦区です。

(*きちほーしが勝手に解釈:書籍には明記されていませんが、小倉さんは激戦区=カフェの需要が高い地域、とにらんだのだと思われます)

仕事環境の整備

「カフェ激戦区」の赤坂でカフェ事業を続けるために、スターバックス等の優良カフェに対抗できる水準の達成が必要と考えました。

そこで味の水準を高めるため、コーヒー豆やエスプレッソマシーンにお金をかけました。

 

コーヒー豆はスターバックスの二倍近い単価の品を空輸し、エスプレッソマシーンは1000万円以上。

店舗内装の水準を高めるため、エスプレッソマシーンの費用と合わせて6000万円以上かけました。

実績

(以下、特に注釈がない限り、小倉さん執筆当時の実績です)

赤坂の他に銀座にも2号店を出店しました。

銀座店の営業時間は7:30~21:30で、障害者の時給は750~820円。

月150時間の労働で10.5万円の月給を実現しました。

スタッフ40人の内、健常者が25人、障害者が15人です。

2023年現在、全国のスワンベーカリーの内11店舗にスワンカフェが展開されています。

事例3:スワン製炭・スワンネット

概要

木炭の生産・流通・販売を手掛けています。

事業開始前の検討・準備

木炭は消臭・調理・インテリアの面で需要が増え、その一方で炭作り農家が少ないので商売になると考えました。

炭自体もいろんなメリットがあります。
一流の料理屋で電気・ガスでなく、あえて炭を使っているほど、炭は調理用燃料として優れています。
炭を焼く時に出る木酢液は体にいいし、マイナスイオンや消臭効果もあり、健康に良いです。
環境改善にも良いです。炭を粉にして撒けば土壌改良・水質浄化もできるし、木の伐採は林の手入れ・里山の保護につながります。

仕事環境の整備

スワン製炭で木炭を生産し、スワンネットがクロネコヤマトの宅急便で流通する、という流れを構築しました。

実績

(以下、特に注釈がない限り、小倉さん執筆当時の実績です)
バーベキュー用に個別販売している他、大手ステーキチェーンにも卸しています。

事例4:ヤマト運輸障害者雇用

概要

小倉さんやヤマト福祉財団と直接関係ありませんが、ヤマト運輸障害者雇用の事例を紹介します。

障害者雇用の広がり

小倉さんの古巣であるヤマト運輸では、戦力として障害者を雇用しようとする機運が高まっています(小倉さん執筆時)。

初めは東京の営業所で7名を雇用。ロジスティクス業務を初めてみました。

ロジスティクス業務(商品管理・入出庫・保管)は健常者でも結構ミスをする業務ですが、きちんと教えれば障害者にもできるよう業務です。

最初はミスも多かったのですが、一人の障害者に健常者がペアになってカバーしながら教えると、高度な仕事もできるようになりました。

実績

(以下、特に注釈がない限り、小倉さん執筆当時の実績です)

ヤマト運輸の東京営業所で7名、札幌に4名、福岡で4名の障害者の雇用を実現しました。

障害者雇用のポイント

 



障害者と健常者の人数を同程度以上に

スワンベーカリー銀座店では障害者6人に対し健常者が8人の体制にしました(小倉さん執筆時)。

スワンベーカリー&スワンカフェ赤坂店では障害者15人に対し健常者が40人です(小倉さん執筆時)。
ヤマト運輸ロジスティクスでも障害者と健常者をペアにしており、小倉さんもこのペアの体制は必須と考えています。

このように、障害者と健常者の人数を同程度以上にすることが大事です。

 

この体制にすることで、障害者はより早く仕事を覚え、高度な仕事もできるようになりま、事故があっても即座に対応できます。

そしてその結果、10万円以上の月給を支払うことができるのです。

お手本になる健常者がいるから障害者は伸びる

健常者も先輩の仕事ぶりをみて仕事を覚えます。

お手本になる先輩が優秀であればあるほど、後輩もより優秀に育ちます。

ましてや障害者はどうしても健常者よりも能力が劣りますし、社会経験・仕事経験も少ないです。

そんな障害者が、お手本である健常者とろくに触れ合えない環境で、自然に仕事能力が伸びるわけがないのです。

おわりに

 

 

この記事では、著書「福祉を変える経営」の中から、小倉昌男さんの代表的な事業、スワンベーカリー、スワンカフェ、スワン製炭をピックアップしてお話しました。

また、ヤマト運輸による障害者雇用についてもお話しました。

そしてそれらの経験を踏まえた障害者雇用のポイントについてもお話しました。

 

小倉さんはどの事業においても、障害者がお涙頂戴ではなく十分に戦力になれるようにビジネス戦略を立てて取り組んだ様子が伺えました。

 

次回は、小倉さんによる経営セミナーの概要についてお話します。

きちほーしの感想

一般就労の現状を振り返ってみた

以前きちほーしは特例子会社を含む一般就労の現状について書かれたムック本の内容をまとめました。

特例子会社とは各企業が障害者を雇用するための子会社です。

そして記事には特例子会社各社の障害者・健常者の構成人数が記載されています(詳しくは記事を御覧ください)。

これを参考に一般的な障害者雇用のサポート体制の実態を確認してみました。

障害者雇用の特例子会社のサポート体制は小倉さんの理想に遠く及ばない

ザッと見ると、障害者2人~8人に対し健常者1人以下の体制です。

小倉さんが推奨する障害者1人に対し健常者1人以上に遠く及びません。

日本はまだまだ障害者の就労環境が整っていない国なんじゃないでしょうか。

書籍概要

 

 

タイトル

福祉を変える経営

発売日

2003/10/09

著者

小倉昌男

概要

お役所頼みで補助金頼りの福祉政策では障害者の幸せは実現できない! いまこそ「もうかる経営」を実践して、障害者が「自分で稼いで生きていける」仕組みを完成すべきだ! 宅急便の生みの親にして、数々の国の規制と戦った小倉昌男ヤマト運輸会長が、みずからの私財を投入したヤマト福祉財団を率い、福祉の世界の革命に乗り出した。

「福祉」の美名のもとに、いっこうに障害者の幸せにつながらない今の福祉政策を徹底的に論破し、自ら考案した焼きたてパン販売事業や製炭事業の伝道で障害者施設のビジネスに経営力をつけさせ、毎年多くのセミナーで福祉関係者に「経営」の真髄を伝授する。

真の市場主義者にして民主主義者、小倉昌男のほんとうの「ノーマライゼーション」社会を実現させるための理論と実践の一冊!

目次

第1章 障害者の自立を目指そう!私の福祉革命(ヤマト福祉財団について 私が福祉の仕事に就いた理由 ほか)

第2章 福祉を変える経済学(「福祉的就労」という言葉のウソ 「福祉的経済」という経済は存在しない ほか)

第3章 福祉を変える経営学(経営とは「収入-経費=利益」を理解すること 「良いモノをつくれば売れる」は間違いです ほか)

第4章 先進共同作業所の経営に学ぼう(パン製造・販売(スワンベーカリー十条店)―立地の悪さをアイデアで克服

豆腐製造・販売など(はらから福祉会)―手作り豆腐で月給五万円 ほか)

 

おまけ

今週のお題「これって私の地元だけですか」)

ここではきちほーしのことをよく知ってもらうため、はてなブログの「今週のお題」をヒントに、本題と少し外れたお話をします。

今週のお題は「これって私の地元だけですか」です。

 

個人情報が特定されそうなお題なので、お題の主旨をガラリと変えて「あの地元(旅先)に行ったときの印象」についてお話したいと思います。

 

きちほーしは関西出身です。

今でこそ「ボケ・ツッコミ」の文化は全国に広がっていますが、きちほーしが関東に来た当初はまだまだ理解されませんでした。

だから、わざと間違ったり、わざと失礼なことを言ってボケると、本気でバカだと思われたり、本気で失礼な人だと思われてしまいました。

それ以来きちほーしはボケができなくなりました。

 

「ボケ・ツッコミ」の文化が広がった今、当時と同じノリで関東でボケても大丈夫でしょうか?

数十年前のトラウマで、まだそれを試せてはいません…^^;。