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【知的障害支援できるかな?】「親なきあと」相談の実例集 -書籍「障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本」のご紹介11-

このシリーズではでは、障害者の経済事情について解説した書籍「障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本」についてグッと要約してお話します。

知的障害・発達障害のお子さんを持つ親御さんはぜひご参考ください。

この記事では、上記書籍の筆者がこれまで相談を受けてきた事例と提供してきたアドバイスをまとめます。

 

 

はじめに

どうも!きちほーしです!

きちほーしの子どもキチノは知的障害があります。キチノの将来がとても心配です。

これまで障害者の経済事情について解説した書籍「障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本」についていろいろ勉強してきました。

今回はこの本の筆者がこれまで相談を受けてきた事例と提供してきたアドバイスをまとめます。

具体例を踏まえることで「親なき後」に子どもが困らないために何をしたほうがいいのか、より深く理解できると思います。

 

なお、一部きちほーしが独自に調査して補足している場合もあります。

きちほーしが調査した部分についてはその旨記載します。

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本記事の範囲: 第2部-第4章 ケーススタディ「親なきあと」のお金の問題

この記事では第2部の第4章「ケーススタディ「親なきあと」のお金の問題」について要約してお話します。

ケース1: 知的障害最重度・障害支援施設に入所・収入安定

  • 本人
    • 愛の手帳1度(知的障害 最重度)
    • 障害者支援施設に入所
    • 母 (76歳)。持ち家に一人暮らし
    • 姉。結婚して別の地域に住む
  • 経済面
    • 障害基礎年金1級
    • 施設利用料や食費を支払っても毎月2.8万円が残るよう補足給付される
    • 医療費無料

親なき後の課題: 相続などの手続き対策

  • 経済面
    • 特に問題なし
  • その他
    • 将来的に母親の持ち家の相続手続きなどの問題がある
    • 本人入院の場合は相応の実費がかかる

アドバイス

母親が元気なうちに持ち家の処分を決める

母親の存命中に売却して老人ホーム等に入るか、持ち家に住み続けるか事前に決めておいたほうが良いです。

母親が元気なうちに遺言を書いておく

持ち家に住み続ける場合は不動産の相続が発生しますし、売却する場合でも現金の相続が発生します。

そのため母親が元気なうちに遺言を書いておくことが望ましいです。

遺言には資産の配分や、持ち家が残るのなら持ち家を誰の名義にするのかなどを書いておきましょう。

母親が元気なうちに姉への頼み事も話しておく

相続手続きなど姉に頼んでおくべきことも事前に整理して話しておきましょう。

成年後見制度の検討もしておく

遠方に住む姉がケアすることは難しいため、成年後見制度の利用を検討しておきましょう。

もし親族ではなく第三者に依頼する場合は、専門職や社会福祉協議会に相談すると良いです。

法定後見・任意後見だけでなく日常生活自立支援事業も考慮にいれましょう。

入院保障のある生命(医療)保険の加入を検討しておく

障害者に限りませんが入院のリスクに備えて、生命(医療)保険の加入を検討しておきましょう。

 

ケース2: 知的障害中度・グループホームに入所・収入安定

  • 本人
  • 家族
    • 父 (75歳)、母 (72歳)。持ち家に居住。
    • 兄。結婚して別の地域に居住
  • 経済面
    • 障害基礎年金2級・地域の障害手当
    • 助成金の支給等で毎月1.5万円が手元に残る
    • 医療費は健常者と同じく3割負担

親なき後の課題: 親なき後の本人のケアが心配

  • 経済面
    • 特に問題なし
  • その他
    • 親なき後本人のケアをしてくれる人を確保

アドバイス

両親の健康状態が悪くなったら後見の準備を

準備を始めるタイミングは、両親どちらかの健康状態が悪くなって、相続の問題が迫った時でよいでしょう。

後見人の検討も必要です。兄の単独後見のケースもあれば、兄と専門職の複数後見のケースもあります。

入院保障のある生命(医療)保険の加入を検討しておく

ケース1と同様に、生命(医療)保険の加入を検討しておきましょう。

住むところがあればなんとかなる

障害者支援施設にしてもグループホームにしても、親なき後も本人の住居は確保されています。

日本の制度では障害者が生活費に困ることはありませんので、住居が確定していればなんとかなります。

ケース3: 知的障害重度・両親と自宅に同居・収入安定

  • 本人
    • 愛の手帳2度(知的障害 重度)
    • 両親と自宅に同居
  • 家族
    • 父 (59歳)、母 (59歳)
    • 分譲マンションに居住
  • 経済面
    • 障害基礎年金1級・地域の障害手当
    • 親同居のため本人の支出はほとんどない
    • 貯蓄あり

親なき後の課題: 漠然とした不安がある

  • その他
    • 貯蓄がどのくらい必要か、成年後見制度はどのタイミングで動けばよいか、親が漠然とした不安を抱える

アドバイス

「様子を見る」というのも有力な選択肢

家族全員が元気で、本人の生活が安定しているので当面はこのままで良いでしょう。

成年後見制度もあせって追い立てられるように進めないほうがいいです。

情報収集くらいで良いでしょう。

あせらず、あわてず待つことも必要です。

 

ケース4: 知的障害中度・一人暮らし・収入安定

  • 本人
    • 愛の手帳3度(知的障害 中度)
    • 賃貸アパートに一人暮らし
  • 家族
    • 父 (78歳)、母 (75歳)
    • 兄と弟がいる
  • 経済面
    • 障害基礎年金2級・地域の障害手当
    • 就労支援施設の月収14.5万円
    • 家賃・光熱水費・電話代など支出10万円
  • その他
    • 一人暮らしができるくらい、ある程度の生活能力はある
    • 父親に数千万円の資産があり、最近体調を崩しやすい

親なき後の課題: 資産の浪費や詐欺被害が心配

  • 経済面
    • 相続した資産の浪費や詐欺にあうことなどが心配

アドバイス

浪費対策に信託の活用を検討

まずは遺産の相続配分を明記した遺言書を作成しましょう。

浪費等の対策には信託の活用を検討するといいでしょう。

信託の仕方は2つの選択肢があります。

  • 遺言代用信託: 信頼できる身近な人を受託人とし、定期的にお金を給付してもらう
  • 特定贈与信託: 信託銀行と契約し、定期的にお金を給付してもらう

 

日常生活のサポートに日常生活自立支援事業の利用を検討

現在一人暮らしができるものの、将来的に判断力が低下する可能性もあります。

日常生活のサポートに日常生活自立支援事業の利用を検討しておきましょう。

 

ケース5: 精神障害2級・母親と同居・収入不安定

  • 本人
  • 家族
    • 母 (77歳)
    • きょうだいナシ
  • 経済面
    • 障害基礎年金 ナシ
    • 不定期のアルバイト収入 月収3万円
  • その他
    • 親同居のため本人の支出はほとんどない
    • 本人の病気が悪化したときは仕事・家事ができない
    • 以前会社に勤めていたが躁うつ病のため退職

親なき後の課題: 収入源が母親の年金のみ

  • 経済面
    • 収入を母親の年金に頼っているため、母親が入院などすると不安
  • その他
    • 今後母親の判断能力が衰えなおかつ本人の病気が悪化した場合は、トラブルがおきても対応しきれないおそれがある。

アドバイス

障害基礎年金の受給手続きを最優先に

精神障害者保健福祉手帳2級なので、障害基礎年金を受給できる可能性は高いです。

一番に受給手続きを進めましょう。

生活保護申請の準備を

生活保護は飽くまでも危機が目前に迫らないと対応してもらえません。

かといって危機が迫るまで何もしないわけにもいきません。

以下のような方法でいざという時に備えていろんな人達と絡んでおき、親がなくなった後に支援してもらえる準備をしておきましょう。

 

おわりに

いかがだったでしょうか?

最重度~中度の知的障害者、および精神障害者のケースについてお話しました。

筆者のアドバイスまとめ

上記の筆者のアドバイスをまとめるとこんな感じです。

  1. 定期収入の確保(年金・手当・信託など)
  2. 金銭管理の支援を用意(成年後見・日常生活自立支援事業など)
  3. 住居の確保 ー 住む場所さえあればなんとかなる!
  4. 入院リスクの対策(医療保険
  5. 困ったときの頼れる支援者を巻き込む(役所の福祉担当者・社会福祉協議会・施設の人・民生委員・近隣の人など)

感想

今回挙げた5つのケースの中では、最重度~中度の知的障害者よりも精神障害者の方が困窮していました。

知的障害者の方が困窮し易いと思っていただけに意外でした。