このシリーズでは訪問介助の実態について書かれた書籍「ズレてる支援!」についてグッと要約してお話します。
この書籍の内容を理解することで、知的障害者の介助とはどんな仕事なのか?介助という仕事に問題点はないのか?探りたいと思います。
今回は前回に引続き、介助という仕事の難しさについてお話します。
はじめに
どーも!きちほーしです!
きちほーしの子どもキチノは知的障害があります。
この子は親なき後誰かの介助を受けながら生きていくことになるでしょう。
しかしきちほーしは介助者が具体的にどんな介助をするのか知りません。
それ故不安なのです。
知的障害者向けの訪問介助とはどんなサービスなのか?
そして介助という仕事に問題点はないのか?
介助の問題点が分かれば改善点も見えてくるはずです。
そこできちほーしが出会ったのは、訪問介助の実態について書かれた書籍「ズレてる支援!」です。
今回は前回に引き続き介助の難しさについてお話します。
アイスブレイク
(今週のお題「防寒」)
アイスブレイクではきちほーしのことをよく知ってもらうため、はてなブログの「今週のお題」をヒントに、本題と少し外れたお話をします。
今週のお題は「防寒」です。
最近はあまり外出しなくなりましたねぇ^^;。
在宅勤務でめったに通勤しないし、お休みの日も車で移動です。
それでも防寒する上ではずせないのが靴下ですね。
特に寝る時は足元が寒くて目が覚めてしまうときもあります。
薄地でもいいので靴下を履くと寒さが解消されます。
寝てる途中に足元が暑くなって脱いでしまうんですけどね…。
本記事の範囲
この記事では書籍の第2章「何を基準にして支援するか」を要約してお話します。
介助者の勘違いで長期間不適切な支援をする場合がある
「介助者が一方的に障害者に合わせている」という勘違い
介助者は障害者にいろいろ配慮していますが、実は障害者が介助者に配慮していることも見落としがちです。
例えば、ある介助者たちは、障害者本人の習慣で月曜は掃除、火曜は洗濯をしていると思いこんでいました。
そして、たまたま月曜の担当者と火曜の担当者が入れ替わると、障害者本人は月曜に洗濯、火曜に掃除をするようになりました。
つまり担当者に配慮して、やる作業を合わせてくれていたのです。
不都合が起こると何かと障害者本人に問題があると考えがちですが、実は周りの方が不適切な場合もあることを考慮しなければなりません。
このような勘違いは他にも有るのです。
- 障害者本人がいつも決まったメニューを頼んでいると思っていたが、
実は介助者がそのメニューをよく作るからいつもそれを頼んでいる。 - 障害者本人がいつも買い物を頼んでくると思っていたが、
実は介助者がよく買い物をするから買い物を頼んでいる。 - 障害者本人がいつも険しい顔をするので介助者は怖がっていたのだが、
実は障害者本人が介助者を怖がっている。
問題が起こって初めて勘違いと分かることもある
勘違いしていても表面的にはうまく介助できているように見えるので、勘違いにはなかなか気づきません。
勘違いに気づくのは、あるとき問題が現れたときだったりします。
場合によってはずっと勘違いしたままの場合だってありえます。
それまではずーーっと不適切な支援を続けている場合があることも、考慮しておかなければなりません。
一般化できるノウハウが少ない
以上のように、様々な要因で障害者本人の希望と介助者の介助の間にはズレが生じやすいのです。
障害者本人の問題でズレる場合と、介助者の問題でズレる場合と、その掛け算でズレる場合があるのです。
なので一般化できるノウハウは少なく、困難にぶつかってもその解決について肝心なことが教科書などにあまりかかれていません。
これも介助を難しくしています。
世界を広げられないもどかしさ
日々の生活には、食事や入浴のような生活を回すことと、非日常的なことを経験する世界を広げることの2つがあります。
生活を回すことだけを支援していては障害者本人の世界を広げることはできません。
介助者たちもそれは分かっているのですが生活を回すことだけでせいいっぱいで、世界を広げられないもどかしさがあります。
おわりに
まとめ
いかがだったでしょうか?
このシリーズでは訪問介助の実態について書かれた書籍「ズレてる支援!」についてグッと要約してお話しました。
前回と今回とで介助の難しさについてお話しました。
介助の難しさの一つは、障害者本人の希望がわからないことです。
希望が伝わりにくいし、行動パターン・判断パターンは時と場合で異なるし、介助者が誘わないと行動しない場合もあります。
障害者本人の希望を制止することも容易ではありません。
障害者本人が適切でない希望を出した場合は介助者が制止するのですが、そのためには障害者本人のできること・できないことの見極めが大事です。
その見極めも難しい。
見極めるには様々な行為を細分化して、どの部分ができるのか評価しないといけません。
介助者からできているように見えて本当はできていなかったり、その逆もあります。
できていないことの原因が介助者にあったりしますし、そのことを長期間介助者がわかっていなかったりもします。
ノウハウを一般化することも難しいです。
感想
ノウハウを一般化できれば…
前回と今回とできちほーしが気に留めたのは次の点です。
ノウハウを一般化できれば介助が効率よくなり、介助のコストも下がり、介助者の負担も下がり、介助される障害者も生活がより良くなると思うのです。
一般化できない理由としては、以下のポイントで原因の把握が困難だからと思われます。
原因候補が多い割に事例が少ない?(きちほーしの想像)
ノウハウは結果とその時の原因候補を把握し、いくつかの事例の共通点を抽出することで得られます。
原因候補が少なく事例が多ければ、ノウハウは把握しやすくなります。
逆に原因候補が多く事例が少なければ、ノウハウの把握は困難になります。
そしてこの本を読む限りは、どうも原因候補が多すぎるようです。
障害者には独特のこだわりがある一方でコミュニケーションがとれないので、介助者は原因候補をたくさん想像しなければなりません。
さらに行動パターンは障害者本人の性格やその時の状況、介助者との関係性によっても異なるので、原因候補はさらに膨れ上がります。
そして、これはきちほーしの想像ですが、原因候補を把握できる事例が少ないのもノウハウの一般化を困難にしているのではないかと思うのです。
知的障害者の人口は要介護高齢者の1/6、単純に考えると事例の絶対数も要介護高齢者の1/6だと思います。
それに介助者さんたちは日々の介助に手一杯です。
「今日こんな問題があって、多分これが原因だと思う」という情報を仲間内では共有していると思います。
ですが、分析し、まとめて部外者と共有するまでの余裕はないのではないかと思います。
障害者介助のノウハウを共有・整理するDAO(きちほーしの思いつき)
あくまでもきちほーしの思いつきでしかありませんが、障害者介助のノウハウを共有・整理するDAOを作ってはどうかと思うのです。
DAOとは自立分散型組織のことです。
そしてきちほーしが妄想するのは、オンラインで日本中あるいは世界中の介助者とノウハウを共有・整理するDAOです。
今パッと思いつく役割は以下のとおりです。
- データ入力者
- 日々の介助日誌を書く人
- 障害者本人および介助者のプロフィール(性格・趣味嗜好・特技など)を書く人
- 分析者
- 介助日誌やプロフィールを様々な要素に分解する人
- 原因候補と結果の関係性を分析する人
- 原因候補と結果の関係性から仮のノウハウを作成する人
- 評価者
- 仮のノウハウを現場に導入し、その結果を評価する人
- DAO運営
- データ入力者・分析者・評価者それぞれを支援するシステムを作る人
- データ入力者・分析者・評価者・DAO運営への報酬やDAOのルールを設定する人
もしかしてこんな仕組みはすでに世の中にあったりするのでしょうか?
書籍概要
【本の紹介できるかな?】介護保険施設のサービスの現状 -介護危機 ―「数字」と「現場」の処方箋2-
タイトル
ズレてる支援!――知的障害/自閉の人たちの自立生活と重度訪問介護の対象拡大
発売日
2015/11/5
著者
寺本 晃久, 岡部 耕典, 岩橋 誠治, 末永 弘
概要
「支援」は、〈そもそも〉〈最初から〉〈常に〉ズレている! 『良い支援?』刊行から7年。使わせてと訴えた「重度訪問介護」の対象拡大が実現する中、あらためて問われているものとは何か! 支援を使って、地域で自立した暮らしをしている人がいること。集団生活ではなく一対一の支援をモデルにすること……「支援」と「当事者」との間の圧倒的なズレに悩み惑いつつ、そのズレが照らし出す世界を必死に捉えようとする「身も蓋もない」支援の営みの今とこれから!
目次
まえがき ─── 寺本晃久
第一部 ズレてる支援
第1章 生活・支援の実際 ─── 寺本晃久
第2章 何を基準にして支援するか ─── 寺本晃久
第3章 亮佑の自立と自律 ─── 岡部耕典
第4章 ズレてる支援/おりあう支援 ─── 岩橋誠治
第5章 支援は常にズレている ─── 末永 弘
第二部 重度訪問介護の対象拡大と生活の実際
第6章 重度訪問介護という枠組み ─── 寺本晃久
第7章 東京の北多摩地域の事例から ─── 末永 弘
第8章 「重度訪問介護の対象拡大」の経緯とこれからのために ─── 岡部耕典
第三部 次につなげる
第9章 重度訪問介護の対象拡大を重度知的当事者の自立生活支援につなげるために ─── 岩橋誠治
第10章 パーソナルアシスタンスという〈良い支援〉 ─── 岡部耕典
第11章 将来の支援の担い手について ─── 末永 弘
あとがき ─── 寺本晃久