このシリーズではでは、障害者の経済事情について解説した書籍「障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本」についてグッと要約してお話します。
知的障害・発達障害のお子さんを持つ親御さんはぜひご参考ください。
この記事では、障害者向けの医療費支援制度についてお話します。
障害者は一般の人よりも収入が低い一方で、医療機関にかかる必要性は高い傾向にあります。
この記事を読んで、障害者の医療費軽減のためにどんな準備が必要か理解しておきましょう。
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はじめに
どうも!きちほーしです!
以前もお話しましたが、障害者の年収は150~200万円程度です。
一般の人よりも収入はだいぶ少ないですね。
【知的障害支援できるかな?】知的障害者の収入とは? -書籍「障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本」のご紹介1-
その一方で障害者は医療機関にかかる機会が多い傾向にあります。
生活費に関する支出軽減支援があるとは言え、医療機関の備えが少ないのは不安です。
病院に行きたくてもお金がないから我慢するなんて事態は避けたいですね。
今回は、障害者の経済事情について解説した書籍「障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本」の中から、医療費の支援制度を抽出・要約してお話します。
なお、一部きちほーしが独自に調査して補足している箇所もあります。
きちほーしが調査した部分については(*きちほーし調査)と記載します。
【知的障害支援できるかな?】知的障害者の支出軽減支援 -書籍「障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本」のご紹介2-
【知的障害支援できるかな?】知的障害者の支出と支援 -書籍「障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本」のご紹介3-
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本記事の範囲
この記事では第1部の4章「定期的な通院や病気になったときの医療費の支援制度」について要約してお話します。
第1部-第4章 定期的な通院や病気になったときの医療費の支援制度
この章では障害者向けの医療費支援制度についてお話します。
障害者医療費助成制度
制度の概要
この制度の概要は以下のとおりです。
助成の条件や内容は自治体・年によって異なる
ポイントはどのような条件でどれだけ助成されるかは自治体によって異なることです。
また、同じ自治体でも年によって内容が異なることもあります(*きちほーし調査)。
制度の呼び方も違うようです(*きちほーし調査)。
詳細は自分で調べなければなりませんね。
3都市の助成例(*きちほーし調査)
書籍では東京都と川崎市の例を挙げていましたので、それに加えてたまたま見つけたさいたま市の例を以下にまとめます。
内容は2022年5月現在の例です。
制度の呼称 | 対象者(*1) | 所得制限基準額 | 助成内容 | |
---|---|---|---|---|
東京都 | 心身障害者医療費助成制度(マル障) | ○身体障害者手帳1級・2級 ○愛の手帳1度・2度 ○精神障害者保健福祉手帳1級 |
360.4万円 (本人の年所得) |
○住民税課税者: 1割負担 ○非課税者:負担なし ※助成の対象外もある(*2) |
川崎市 | 重度障害者医療費助成事業 | ○身体障害者手帳1級~2級 ○知能指数35以下または療育手帳(障害程度A) ○身体障害者手帳3級であり、知能指数50以下または療育手帳(障害程度B) ○精神障害者保健福祉手帳1級 |
なし | ○入院・通院の保険医療費の負担なし ○訪問看護ステーション基本利用料の負担なし ※助成の対象外もある(*3) |
さいたま市 | 重度心身障害者医療費支給制度 | ○身体障害者手帳1~3級 ○療育手帳マルA、A、B ○精神障害者保健福祉手帳1級 の交付を受けている方 ○後期高齢者医療制度の障害認定 |
なし | ○入院・通院の保険医療費の負担なし ※助成の対象外もある(*4) |
(*1)対象者に「後期高齢者医療制度の障害認定を受けた者」もあるがここでは省略
(*2)(*3)(*4)保険対象外の医療は助成対象外
(*3)精神障害者保健福祉手帳1級の人は入院医療関連は助成対象外
(*4)精神障害者保健福祉手帳1級の人は精神病床への入院費用は助成対象外
申請は役所の窓口で(*きちほーし調査)
いずれの都市も申請は役所の窓口でした。
きちほーしが住む街も窓口でした。
障害者が独力で窓口に申請することは非常に困難なので、ここらへんもう少し配慮できないのかと思うんですよね。
生命(医療)保険
助成だけでは入院をカバーしきれない
上記にあるように自治体の助成制度はなんでも助成してくれるというわけではありません。
特に入院すると助成ではカバーしきれない場合があります。
障害者は個室料や差額ベッド代がどうしても必要になることも多いですし、食事代や入院に伴う実費も長期になれば負担が大きくなります。
でもこれらは助成の対象外なのです。
助成でカバーしきれない出費に対応するため、入院保障のある医療保険の加入を検討してもいいかもしれません。
障害者でも加入できる保険は限りがある
障害者でも加入できる保険は限られるようです。
ですがたとえばパニックによる損壊や傷害に備えたものもあるようです。
書籍では次の3つを紹介しています
まずは色々比較して検討するといいかもしれませんね。
高額療養費制度
制度の概要
この制度は同じ月に同じ病院などで支払った自己負担額の内、一定料を超えた分が支給されるというものです。
障害者に限った制度ではありませんが、障害者は利用する機会が多い傾向にあり特に助かる制度です。
なお、高額療養費が給付される自己負担限度額は、所得によって変わります。
申請の仕方(*きちほーし調査)
参考サイト:高額療養費(高額医療費支給制度)とは? 申請方法と注意点
申請には事後申請と事前申請があります。
そしてそれぞれの仕方は加入している公的医療保険によって異なります。
上記参考サイトでは代表的なものとして健康保険(協会けんぽ)と国民健康保険(東京都港区)を挙げています。
その概要を以下にまとめました。
(*1)(*2)申請書とともに領収書が求められる場合がある。
(*2)申請書は区から郵送される。
(*3)申請書は窓口や協会けんぽのHPから入手できる。申請には健康保険証のコピーが必要。
(*4)申請には保険証・本人確認書類・マイナンバーカード等が必要。
世帯合算と多数回該当
参考サイト:高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)(協会けんぽ)
この制度の概要について説明します。
世帯合算
家族の医療費(自己負担分)の月の合計が自己負担限度額を超えると、越えた分が払い戻されるという規定です。
- 自己負担限度額は、所得によって変わる
- 合算できる対象は、同一世帯であり同じ健康保険に加入している人
多数回該当
何回もたくさんの医療費を払った月があると、自己負担限度額が下がるという規定です。
具体的な条件は、過去1年間で同一世帯の高額療養費の支給を受けた(つまりたくさんの医療費を払った)月が3回以上あることです。
申請は窓口が郵送
こちらも申請が必要なようです。
協会けんぽの場合は健康保険高額療養費支給申請書というものが必要で、提出方法は窓口か郵送です。
提出先は健康保険証に記載されている管轄の協会けんぽ支部(参考サイト:申請書の提出先(協会けんぽ))です。
自立支援医療(精神通院医療)
うつ病や躁うつ病、てんかんなどの精神医療の自己負担を軽減する制度です。
申請は窓口か郵送で(*きちほーし調査)
これも申請が必要で、少なくとも以下の3都市では窓口や郵送による申請が可能なようです。
自立支援医療(精神通院医療)の給付の申請について(さいたま市)
おわりに
まとめ
いかがだったでしょうか?
この記事では、医療費の支援制度についてお話しました。
具体的にはこんなことでした。
- 障害者医療費助成制度
- 障害者の医療費を助成する制度
- 内容は各自治体によって異なり、年によって異なる場合もある。
- 生命(医療)保険
- 助成でカバーしきれない入院の備えに考慮しても良い
- 障害者でも加入できる保険は限りがある
- 高額療養費制度
- 医療費の自己負担の上限が定められている制度
- 健常者・障害者に共通した制度
- 世帯合算や高額療養費の支払い回数で上限額が変わる
- 自立支援医療(精神通院医療)
- 精神医療の自己負担を1割に軽減する制度
- どの制度もその都度申請が必要
次回は、子どもへの財産の遺し方についてお話します。
感想: やっぱり申請方法をどうにかしてほしい
前回の記事にも書きましたが、申請方法をどうにかしてほしいと思うのです。
【知的障害支援できるかな?】知的障害者の固定費を軽減する -書籍「障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本」のご紹介4-
知的障害がある人間が窓口申請や郵送申請を独力で行うのは困難だと思うのです。
せっかくある医療費の支援制度も親なき後に障害者たちは享受できないんじゃないかと思うのです。
後見人や施設の支援者をつければなんとかなるかもしれませんが、彼らも赤の他人のためにどこまで誠意を尽くしてくれるかわかりません。
せっかくマイナンバーというシステムがあるのですから、これを利用すればいいのにと思います。
病院で精算したら医療費を自動的に集計して自動的に口座に振り込む、といった仕組みを作れば申請レスで支援を受けられるんですけどね。
(参考)書籍概要
タイトル
障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本
著者
渡部 伸
概要
知的障害を持つ子の親であり行政書士でもある筆者が、知的障害者を守る社会的セーフネットや親が生前出来ることについて分かりやすく解説しています。
目次
第1部 「親なきあと」の収入と支出を知ろう(障害基礎年金の仕組み;暮らしの場によって変わる収支;毎月の固定費を軽減する;定期的な通院や病気になったときの医療費の支援制度)
第2部 「親なきあと」の経済的に困らない仕組みを考えよう(子どもの生活を支える資産の残し方;日常のお金を管理するために;ひとり残った子どもの経済的なサポート策;ケーススタディ・「親なきあと」のお金の問題)