このシリーズではでは、介護の諸問題について解説した書籍「介護危機 ―「数字」と「現場」の処方箋」について要約しつつ、時おり知的障害者支援とも比較してお話します。
書籍は2017年発行で少し古いですが、参考になると思います。
今回は、介護のトラブルについてです。
アイスブレイク
(今週のお題「わたしは○○ナー」)
アイスブレイクではきちほーしのことをよく知ってもらうため、はてなブログの「今週のお題」をヒントに、本題と少し外れたお話をします。
今週のお題は「わたしは○○ナー」です。
うーん。
強いて言うならトレーニンガーですかねぇ?
ダイエットのつもりでストレッチ体操や体幹トレーニングをはじめました。
その後これらはダイエットにあまり影響しないと思うようになったのですが、トレーニングすると目覚めがよくなって一日の調子がいいんですよね。
というわけできちほーしはトレーニンガーですね^^。
はじめに
心配性のきちほーしが憂う!障害者支援施設は安心!?
どうも!きちほーしです!
きちほーしの子キチノは知的障害があります。
いずれ障害者支援施設などにあずける日が来るでしょうが、サービスの基盤である事業者の経営に無理が生じればサービスの低下につながります。
そこで心配性のきちほーしは、介護の諸問題について扱った書籍「介護危機 ―「数字」と「現場」の処方箋」を読みました。
障害者支援と介護は異なりますが、認知力や判断力が弱い人を支援するという点で共通しており、問題点も共通していそうだからです。
このシリーズでは、この書籍について、その概要と、きちほーしが参考になったところをピックアップし、要約して紹介します。
今回は介護保険サービスの内、介護トラブルについてです。
本記事の範囲
この記事では第1章「介護業界の現場で起きていること」の1部を要約してお話します。
事業所の問題点
居宅サービス事業所は10年間で半数以上が廃業
古いデータですが2006年~2015年の10年間で東京都の居宅サービスの開業・廃業状況は以下のとおりです。
- 開業: 8359件
- 廃業: 5373件
開業の64%が廃業です。
廃業で困るのは経営者だけではありません。
利用者は新たな事業所を探さなければなりませんし、従業員は新たな職場を探さなければなりません。
利用者にとっても従業員にとっても負担になります。
ちなみに廃業の主な理由は、安易な起業による業績不振や人材不足のようです。
事業所の不正請求が横行
2006年~2015年の10年間で、不正請求や人員基準違反などで指定取り消しになった東京都の居宅サービスは169件あります。
不正請求の主なパターンは以下の通りです。
- 架空請求: サービスを行っていないのに介護報酬を請求
- 加算の基準違反: 資格ある人員の配置がない・計画書の作成をしないなど、加算要件を満たさないまま加算分を請求
- 人員基準違反: 夜勤体制の基準を満たさないまま満たしていると報告
- 社員数の虚偽: フィリピン人やボランティアを社員として報告
これらの不正請求の理由は、故意による場合と法制度の理解不足で不正と気づいていない場合の2パターン。
どちらにしても経営者の管理体制不足が原因のようです。
グレーンゾーンサービスの事例
法の網の目をくぐり抜けたグレーゾーンのサービスもあります。
グレーゾーンだから悪いとは限らないでしょうが、事件が発生したことも事実です。
以下に2つの事例をお話します。
無届け老人ホーム
2009年「静養ホームたまゆら」という無届けの老人ホームで10名死亡の火災が発生しました。
建築基準法違反や、入居者居室を外から施錠していたという理由から、施設を運営していたNPO法人理事長が逮捕されました。
お泊りデイサービス
ディスグランデ介護株式会社というところが通称お泊りデイサービスという事業をフランチャイズ展開し大きな問題となりました。
基本は通所介護サービスですが、それに宿泊サービスを追加することで実質的なショートステイサービスを格安で提供していました。
ショートステイサービスにしなかったのは、必要な人員・設備が確保できなかったためです。
フランチャイズ本部のずさんな管理が原因でフランチャイジーの不正請求・倒産・労働問題・賃金未払い等が相次ぎ発生し、大きな問題になりました。
法改正で増える事務コスト
介護保険制度は3年毎+不定期に改定されますが、こまごまと対応しなければならないのが介護事業所に大きなコスト負担になっています。
改正内容を細部まで理解しないと気づかず不正給付につながるおそれもあります。
改定の度に人員採用・社員教育が必要ですし、介護給付請求の事務ソフトの変更費用も大きな負担になっています。
クラウドサービスもありますが提供企業が高額なセキュリティシステムを勧める場合もあるので経営者はセキュリティの知識が必要です。
また情報公表のための調査票の記入依頼が様々な行政から送られます。
東京都の事業者の場合は、少なくとも東京都・各市町村・厚労省から依頼がかかります。
介護スタッフの問題点
負担が一番大きいのは徘徊・幻覚・暴力
高齢者の認知症には記憶障害などの「中核症状」と徘徊・幻覚・暴力行為などの「周辺症状」があります。
「周辺症状」をもう少し細かく分けると暴言・暴力・失禁・弄便・深夜徘徊などがあります。
この周辺症状はあっという間に介護者の心身を披露させます。
クレーマーの存在
介護業界では利用者本人やそのご家族がクレーマーになるケースがあります。
実際にあったクレーマーの事例を挙げると以下のとおりです。
- 介護料の1割分(本来は利用者が負担する)くらい負けなさいよ!
- 犬の散歩をしといて
- 医療行為をしてほしい(法律違反なのでできない)
上記クレームに対応できないことを丁寧に説明しても「誠意がない!」と納得しない人もいるようです。
場合によってはスタッフに延々と不満を訴えたり何度も電話をして非難する人もいて、介護スタッフへの負担になっています。
介護スタッフへのフォロー体制が必要
クレーム対策として必要なのが教育とフォロー体制です。
クレーム対応の失敗・成功事例を検討しシミュレーションする機会を与えることが重要です。
また、クレームを受けた担当だけでなく事業所全体でフォローする体制も必要です。
介護スタッフから高齢者への暴言暴力は非難されますが、高齢者から介護スタッフへの暴言暴力が見過ごされがちです。
そのためケアマネジャーを置くなどの体制も必要になります。
介護スタッフが犯罪者になってしまうケースもある
リーマン・ショック後は厚労省や都道府県が失業者に介護業への転職をバックアップした影響で介護業界に転職した人が多くいます。
その中には介護職に不適格な人材もいますが、人材不足が顕著な介護業界でそれでも採用せざるをえないという実態があります。
高齢者施設や障害者施設での殺人事件は、不適格な人材であることに加え夜勤などのストレスに耐えきれず起こされてしまったケースといえます。
介護職は転職しがち
一般的に介護職は離職率が高く転職回数が多いようです。
書籍ではその理由として以下を挙げています。
- 仕事内容があまり変わらないので、別の事業所へ転職しても無理なく働ける。
- 長期的なキャリアパスと教育制度を整備している組織が少ない。
- 介護報酬改定で報酬が下げられる傾向があり零細企業も多いため、収入の安定・昇給が難しい。
- ずーっと同じような業務内容に飽きてしまうというケースもある。
おわりに
いかがだったでしょうか?
このシリーズでは、知的障害者支援の問題点を知りたいきちほーしが、似たようなサービスと思われる介護の問題点について調べています。
そしてこの記事では、介護問題について書かれた書籍「介護危機 ―「数字」と「現場」の処方箋」の中から、介護のトラブルについてお話しました。
大きく事業所の問題点と、介護スタッフの問題点がありました。
事業所の問題点としては、不正請求やグレーゾーンサービスなどが横行していると言う問題もありました。
さらに度重なる法改正によるコストや人材不足が事業を圧迫している現状もありそうです。
介護スタッフの問題点としては、人材不足で質の良くない人も採用しなければならないという現状があります。
そして高齢者による暴力・徘徊やクレーマー・夜勤などの負担にさらされ、人材不足と相まって事件に発展する場合もあることでした。
また、同じ作業ばかりなので飽きてしまうという問題もありました。
知的障害者の支援施設でも似たようなことがありそうですね。
良いサービスを受けるには利用者側もそれなりに負担して、それなりにスタッフに配慮したほうが良さそうです。
ではまた!
(参考)書籍概要
タイトル
介護危機―「数字」と「現場」の処方箋
発売日
2017/6/14
著者
宮本 剛宏
概要
介護人材の不足、行政の財源不足の2つの問題が叫ばれる今、介護の自己責任が問われはじめている。
大きな選択肢となるのは「自宅か施設(老人ホーム)か?」。
全ての人が「最期まで自宅で過ごしたい」という願いを実現できるわけではない。
介護業界における問題の本質を暴き、豊富な現場データと実体験をもとに、個人・行政・企業が取組むべき処方箋を提言。
目次
◆第1章 介護の現場で起きていること―介護職の声と顧客データから何がわかるか―
◆第2章 なぜ、介護職12万人、財源1.5兆円が不足するのか
◆第3章 毎年5割成長する介護企業の秘密
◆第4章 こうすれば介護の人材・財政不を解消できる
◆第5章 それぞれの「希望」をかなえるビジネスモデル